ドクタートラストでは、毎年ストレスチェックの実施を受託した企業・団体における集団分析データをもとに業種別のランキングを作成しており、業種ごとの負荷がかかりやすいポイントやストレスの傾向についても分析を行っています。
今回からシリーズで、ストレスチェック結果から明らかになった業種ごとのストレス傾向を解説します。
初回は「建設業」です。
※本コラムの業種分類は「日本標準産業分類」に準拠しています。
高ストレス者率は前年度より悪化
高ストレス者率とは、ストレスチェックを受検した人のなかで、高ストレス者と判定された人がどのくらいいるかを示した割合です。
2022年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した建設業の高ストレス者率は16.2%でした。
2021年度は全国平均より高ストレス者率が低かったのですが、2022年度は全国平均を上回っており、前年度からの変化幅が2番目に大きい業種でした。
さらに2022年度の結果を中分類で見ていくと、建設業の中でも設備工事業が、高ストレス者率の高い結果となっています。
総合健康リスクは平均並み
総合健康リスクとは、仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題が発生するリスクを表しています。
厚生労働省が定める基準値を100として、建設業の総合健康リスクは97と、全国平均や2021年度と同じ水準でした。
また中分類で見ても、各業種のリスク値に大きな開きはなく、総合工事業では建設業の平均より1ポイント低く、職別工事業と設備工事業では建設業の平均より1ポイント高い結果となりました。
建設業の特徴的な回答
それでは、建設業で働く人々からは、どのような回答傾向が見られたのでしょうか。
全国平均とくらべて特徴的な結果が見られた設問を5つ紹介していきます。
「高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ」
ちがう・ややちがう | そうだ・まあそうだ | |
建設業 | 30.9% | 69.1% |
全国平均 | 41.3% | 58.7% |
「複数の人からお互いに矛盾したことを要求される」
ちがう・ややちがう | そうだ・まあそうだ | |
建設業 | 53.7% | 46.3% |
全国平均 | 60.6% | 39.4% |
「からだを大変よく使う仕事だ」
ちがう・ややちがう | そうだ・まあそうだ | |
建設業 | 56.7% | 43.3% |
全国平均 | 62.8% | 37.2% |
「あなたが困った時、どのくらい頼りになりますか?(職場の同僚)」
非常に・かなり | 全くない・多少 | |
建設業 | 52.6% | 47.4% |
全国平均 | 58.2% | 41.8% |
「自分で仕事の順番・やり方を決めることができる」
そうだ・まあそうだ | ちがう・ややちがう | |
建設業 | 70.5% | 29.5% |
全国平均 | 65.2% | 34.8% |
「高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ」「からだを大変よく使う仕事だ」という設問に「そうだ・まあそうだ」と回答している割合が全国平均とくらべて高くなっています。
これは、専門性の高さや、職場が身体的な負担を感じやすい環境であることが回答傾向に反映されているのではないでしょうか。
さらに、「複数の人からお互いに矛盾したことを要求される」という設問については、建設現場が元請や下請、協力会社など、さまざまな立場の人が集まる環境であることが、このような回答傾向に表れているのかもしれません。
さいごに
建設業では、2024年4月から残業規制が始まるなど大きな転換期を迎えます。
建設業で働く人々のなかには、自身が建設に携わった建物や橋、道路などが、人々の暮らしを支えるだけでなく、地図に載り、次世代まで残るなどの社会貢献度の高さから、建設業でしか得られないやりがいを感じている方も多いのではないでしょうか。
業種ごとのストレス傾向を知り、建設業界で働く人たちへのメンタルヘルス対策に活かしていただけたらと思います。
今回は建設業について全国データの傾向から見た結果をお伝えしました。次回は「製造業」のストレスの傾向について解説していきます。