ドクタートラストでは、毎年ストレスチェックの実施を受託した企業・団体における集団分析データをもとに業種別のランキングを作成しており、業種ごとの負荷がかかりやすいポイントやストレスの傾向についても分析を行っています。
このシリーズでは、ストレスチェック結果から明らかになった業種ごとのストレス傾向を解説しています。
前回は建設業におけるストレス傾向の解説を行いました。
今回は「製造業」です。
※本コラムの業種分類は「日本標準産業分類」に準拠しています。
高ストレス者率は3年連続悪化
高ストレス者率とは、ストレスチェックを受検した人のなかで、高ストレス者と判定された人がどのくらいいるかを示した割合です。
2022年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した製造業の高ストレス者率は19.4%でした。
2020年度から3年連続増加傾向にあり、全国平均と比較してもすべての年度において上回る結果となっています。
続いて2022年度の製造業の高ストレス者率を中分類で見ていきましょう。
製造業の中で、最も高ストレス者率が低かったのは電気機械器具製造業で15.4%と、全国平均と同等の水準となっています。一方で最も高ストレス者率が高かった印刷・同関連業では25.1%でした。また、食料品製造業や金属製品製造業、生産用機械器具製造業、輸送用機械器具製造業では高ストレス者率が20%を上回る結果となり、4、5人に1人が高ストレス者である状況です。
総合健康リスクも全国平均より高い
総合健康リスクとは、仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題が発生するリスクを表しています。厚生労働省が定める基準値を100として、数字が大きいほど健康リスクが高いことを示しています。
製造業の総合健康リスクは104となっており、前年度から1ポイント下がり改善がみられましたが、全国平均よりも高い結果でした。
また、2022年度の製造業の総合健康リスクを中分類で見ると、リスク値が最も低い業種と高い業種では20ポイントの開きがありました。
全国平均と同等水準の業種もあれば、製造業の業種平均より高い業種もある状況です。
製造業の特徴的な回答
それでは、製造業で働く人々からは、どのような回答傾向が見られたのでしょうか。
全国平均と比べて特徴的な結果が見られた設問を5つ紹介していきます。
「仕事に満足だ」
満足・まあ満足 | 不満足・やや不満足 | |
製造業 | 60.0% | 40.0% |
全国平均 | 68.1% | 31.9% |
「私の部署と他の部署とはうまが合わない」
ちがう・ややちがう | そうだ・まあそうだ | |
製造業 | 72.2% | 27.8% |
全国平均 | 79.6% | 20.4% |
「働きがいのある仕事だ」
そうだ・まあそうだ | ちがう・ややちがう | |
製造業 | 65.6% | 34.4% |
全国平均 | 73.0% | 27.0% |
「意欲を引き出したり、キャリアに役立つ教育が行われている」
そうだ・まあそうだ | ちがう・ややちがう | |
製造業 | 38.8% | 61.2% |
全国平均 | 45.7% | 54.3% |
「あなたの個人的な問題を相談したら、どのくらいきいてくれますか?(職場の同僚)」
非常に・かなり | 全くない・多少 | |
製造業 | 45.6% | 54.4% |
全国平均 | 52.6% | 47.4% |
「仕事に満足だ」という設問に「不満足・やや不満足」と回答している割合、「働きがいのある仕事だ」に「ちがう・ややちがう」と回答している割合が全国平均と比べて高くなっています。
この2つは何かの影響を受けて回答される「結果指標」と呼ばれるものです。
そのため、仕事の満足度や働きがいを向上させるためには何が必要なのか、それぞれの会社や部署単位で把握していくことが重要になります。
さいごに
今回は、製造業について、全国データの傾向からみた結果をお伝えしました。
高ストレス者率、総合健康リスクともに高い業種ではありますが、ストレスを取り除く視点に加え、「仕事の満足度」や「働きがい」を高める視点も持ちながら、製造業で働く人たちへのメンタルヘルス対策に活かしていただけたらと思います。