私たちが働いていくうえでワーク・エンゲイジメントは欠かせません。
しかし、その必要性は分かっていても、現状のワーク・エンゲイジメントや、実際に何が得られるのかをいまいち理解していない人もいるのではないでしょうか。
今回は、ワーク・エンゲイジメントの必要性や業種別にみる傾向、高めるためのポイントについて解説していきます。
ワーク・エンゲイジメントとは?
WE(ワーク・エンゲイジメント)とは、以下の3点を満たした状態を指します。
・仕事に対してやりがいを感じている
・仕事に熱心に取り組んでいる
・仕事から活力を得ていきいきとしている
つまり、仕事へのエネルギーが高いほどワーク・エンゲイジメントが高いと言えるでしょう。
なぜ企業はワーク・エンゲイジメントを高める必要があるのか
WEが高いと企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか。
企業が発展していくためには、優秀な人材が不可欠です。
しかし、優秀な人材ほどステップアップのために転職を考えたり、ほかの会社からヘッドハンティングされたりしてなかなか定着しない傾向にあります。
WEが高い企業では、社員一人ひとりのモチベーションも高いため、企業への貢献心が強く、ある程度困難があったとしても長く活躍してくれるため、全体的に離職率が低くなると考えられます。
また、WEが高くなると仕事におけるストレスも軽減され、ポジティブな考え方・雰囲気が職場に流れます。
雰囲気のよい職場の社員は、企業の目標や課題を「自分ごと」「自らの成長のために必要なこと」として捉えられるため、積極性が生まれ、生産性の向上につながります。
生産性が向上すると、余分な作業にかける時間や手間が省けるため、企業にとってはコストダウンが見込めます。また、サービス・製品の品質が向上することで、顧客満足度が高まり、リピート率につながるため、結果的に、企業の業績が上昇すると推測できます。
全国データからみる仕事に対する姿勢の割合
表1は、2022年度ドクタートラストで80問受検したおよそ21万人のデータを基に、「WE(ワーク・エンゲイジメント)の点数」と「総合判定」から受検者の仕事に対する姿勢についてあらわしたものです。
表1
縦軸がWEに関する設問の合計得点であり、上に行くほどWEが高いことを意味します。また、横軸は個人結果の総合判定(A~E)を示しており、右に行くほどストレスが低いことを意味します。
このように、WEの点数と総合判定結果を掛け合わせることによって仕事に対する姿勢を以下の4つに分類することができます。
【いきいき】
WEもストレスレベルも良好で働きがいを感じながらいきいきと仕事に取り組んでいる人
【ゆるゆる】
ストレスレベルは低いが、仕事への情熱やストイックさが低下している人
【ぎりぎり】
ストレスレベルが高くても、仕事へ情熱を持ち、やりがいを追求し、少しくらいの疲労は気合で乗り切ろうとする人
【げんなり】
ストレスレベルが低く、働きがいを感じていない人
ここで注目すべき点は、げんなりゾーンを除く3つの姿勢の境界線にあたるゾーン(赤字箇所)が、それぞれの姿勢のなかで最も人数が多いことです。
このゾーンの人たちは、あと少しWEが高まればいきいき働ける可能性もありますが、逆に減ってしまうと一気にストレスが溜まりやすくなってしまい、やる気を失いかねません。
そのため、いきいきと働くためにはストレスレベルを減らすのも大切ではありますが、「WEを高める」という視点を持つことも重要であると考えられます。
業種ごとのワーク・エンゲイジメント傾向
次に、業種ごとのWEの違いを見ていきましょう。
今回は、80問受検をした957社のうち、WEの平均点が全国平均より不良な群と良好な群に分け、業種ごとにその割合を算出しました。
その結果、不良群の割合が高い、すなわち、WEが最も低い3業種は表2のとおりでした。
表2
最も不良群の割合が大きかったのが「複合サービス」、以下「製造業」、「運輸業・郵便業」の順でした。
反対に、良好群の割合が高い、すなわち、WEが最も高い3業種は表3のとおりです。
表3
最も良好群の割合が大きかったのが「教育・学習支援業」、以下「学術研究_専門技術サービス業」、「公務_他に分類されるものを除く」の順であるとわかりました。
WEが高い業種と低い業種の違いとは
WEが低い業種は、重たい荷物を持つなどの肉体労働が多く、納期が近づくにつれて業務量が増えていく傾向にある業種だと考えられます。
また、物やサービスに関わる業種が多く、成果がはっきりと目に見えにくいため、スキルを身につけてもキャリアアップにつながらない部分も多いのではないかと推察できます。
一方で、WEが高い業種は、人と関わるものが多く、また、自らの能力を活かしやすい業務内容でもあるため、自分の仕事に対しての反応を受け取りやすく、社会貢献を実感できるのではないかと考えられます。
ワーク・エンゲイジメントを高めるポイントは
では、どのようにすればワーク・エンゲイジメントは向上していくのでしょうか。
ワーク・エンゲイジメントを高めるための重要なカギとなるのが、私たちの身の回りの職場環境です。
具体的には、下記のポイントを見直し、検討していく必要があります。
リラックスして仕事ができる職場空間にすること
社員が集中して仕事ができる環境を作ることで生産性向上につながります。
社員がオフィス内に自分専用の席を持たず、自分の好きな席を自由に選んで仕事をするフリーアドレス制度を導入したり、社内にカフェスペースを設けたりすることでメリハリをつけて働くことができるでしょう。
業務の目的や目標を明確にすること
自身の仕事の意味や最終的な目標を明確にすることでモチベーションは向上にしていくでしょう。
また、仕事に対する目的・目標を社員が十分理解することは、会社への信用にも関わってくるため、非常に大切なポイントです。
社員が自分の能力を発揮できること
社員の強みやスキルを発揮できる機会を与えることが大切です。
たとえ失敗したとしても、本人を責めたり、仕事をとりあげたりするのではなく、失敗から学んで次に生かす機会を与えましょう。
上司・同僚とのコミュニケーションが活発であり、適切な人事評価がなされていること
「同僚とは上手く話せても、上司とは仕事以外の話がしづらい」という人も多いのではないでしょうか。
しかし、日頃から上司・同僚など、縦横関係なく活発にコミュニケーション(雑談)をしている会社は、業務における連携も綿密に行える環境にあります。
こうした環境では、繁忙期でも業務分担がスムーズで、上司への相談も気兼ねなく行えるでしょう。
まとめ
今回、業種別にワーク・エンゲイジメントの違いを見てみると大きな差が出ました。
ワーク・エンゲイジメントが高めることは社員の成長を促すだけではなく会社の業績向上にもつながります。
逆に、ワーク・エンゲイジメントが低い企業では、社員のモチベーションが下がり、全体の生産性も低下していきます。
また、ワーク・エンゲイジメントを高めるためには、職場環境の整備が重要です。
たとえば、業務の特性上一人で作業をする業種の場合では、共有スペースを利用してリラックスできる空間を作る、定期的に上司と面談する機会を作るなど、それぞれの状況に合わせた施策を行うことをおすすめします。
社員一人ひとりが仕事に対してポジティブな気持ちで取り組めるように、組織体制の見直しや社内スペースの有効化を図り、ワーク・エンゲイジメントを高めていきましょう。