ストレスチェックで読み取れるストレス指標の一つに、「仕事の質的負担」があります。
この仕事の質的負担が高い場合、一般的には職場の状況として良くないと判断する人も少なくないでしょう。
実際のところ、仕事の質的負担が高く、高ストレス者の割合が多い会社は存在します。一方で、仕事の質的負担が高いにも関わらず、高ストレス者率が低い会社も存在するのです。
こちらのコラムでは、仕事の質的負担とストレスの関係を考えてみます。
ストレスチェックにおける仕事の質的負担
ストレスチェックで仕事の質的負担を問う設問として、以下の3つが設けられています。
設問4:かなり注意を集中する必要がある
設問5:高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ
設問6:勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない
回答の選択肢は「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の4つで、「そうだ」「まあそうだ」が不良回答、「ややちがう」「ちがう」が良好回答に振り分けられます。
ドクタートラストの2022年度の統計データでは、いずれの設問も、不良回答の割合が6割を超えています。
設問4:かなり注意を集中する必要がある | 設問5:高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ | 設問6:勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない | |
ちがう | 2.80% | 9.60% | 5.70% |
ややちがう | 14.10% | 31.70% | 25.20% |
まあそうだ | 53.70% | 44.60% | 47.10% |
そうだ | 29.40% | 14.20% | 22.00% |
筆者自身もそうですが、日本人は「仕事は集中して行うもの」、「就業時間中は仕事に専念するものだ」という道徳感を持っている人が多いのではないでしょうか。
つまり、設問4、6の回答結果には、実際の負担感だけでなく「~すべき」の意識が含まれている可能性があります。
また、会社側の視点で見たときに、こうした意識を持つ従業員が極端に少ない場合のほうが、問題がはるかに大きいように考えられます。
仕事の質的負担とやりがいの関連性
設問4、6では日本人特有の回答傾向が見られる可能性をお伝えしましたが、設問5は専門知識・技能を必要とする職場で、特に不良回答率が高くなります。
「高度な知識や必要な状態」とは、たしかにストレスがかかりそうな状態に考えられます。
しかし面白いことに、仕事の質的負担がある程度まで増えることで、挑戦や成果の実感が生まれることがあります。一定の負担があることで、やりがいを感じる余裕ができるのです。
実際に仕事の質的負担が高いにもかかわらず、高ストレス者率が低い会社においては、「働きがい」や「ワーク・エンゲイジメント」といった指標に良好傾向が見られる割合が高くなっています。
バランスの重要性
ここで重要なのが、仕事の質的負担とやりがいのバランスです。適切な負荷がかかることで、仕事に対する意欲が高まるとともに、やりがいが感じられ、結果的にストレスの度合いも低くなります。ただし、過度な負担は、ストレスとしてしか感じられなくなります。
このバランスを見つけることは、充実した仕事を築く上で不可欠です。
まとめ
筆者自身も、これまでの人生で仕事の質的負担とやりがいのバランスを模索してきました。新しい業務を任せられると、負担は増大するもののその中での自己成長や成果達成感がやりがいとなりました。同時に、負担が過度になると、やりがいを感じる余裕がなくなり、モチベーションも低下してしまうことも経験しました。
適切なバランスを見つけることで、仕事の質的負担はプラスにもマイナスにもなり得ます。
質的負担のバランスを良い状態に保つための方法は、次回以降に解説します。