ドクタートラストでは、毎年ストレスチェックの実施を受託した企業・団体における集団分析データをもとに業種別のランキングを作成しており、業種ごとの負荷がかかりやすいポイントやストレスの傾向について分析を行っています。
このシリーズでは、ストレスチェック結果から明らかになった業種ごとのストレス傾向を解説しています。
今回は「卸売業・小売業」です。
※本コラムの業種分類は「日本標準産業分類」に準拠しています。
全国平均を上回る高ストレス者率
高ストレス者率とは、ストレスチェックを受検した人のなかで、高ストレス者と判定された人がどのくらいいるかを示した割合です。
2022年度は、ドクタートラストの提供するストレスチェックサービスを1,162組織、約41万人に受検いただきました。
このうち、卸売業・小売業に該当する組織は156、受検者数は36,794人で、高ストレス者率は16.8%でした。
高ストレス者率の全国平均を見ると2020年度から3年連続増加傾向にありますが、卸売業・小売業も増加傾向がみられ、すべての年度において全国平均より高ストレス者率が高い結果でした。
続いて2022年度の卸売業・小売業の高ストレス者率を中分類で見ていきましょう。
卸売業・小売業のなかで最も高ストレス者率が低かったのは、織物・衣服・身の回り品小売業で13.7%と全国平均より低い水準となっています。
一方で、最も高ストレス者率が高かったのは各種商品卸売業で21.8%と、5人に1人が高ストレス者である状況です。
総合健康リスクは全国平均並み
総合健康リスクとは、仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題が発生するリスクを表しています。
厚生労働省が定める基準値を100として、数値が大きいほど健康リスクが高いことを示しています。
卸売業・小売業の総合健康リスクは、2020年から2021年にかけて1ポイント改善して97となっており、その水準を維持しています。
全国平均も97であることから、健康リスクが平均並みの業種といえます。
続いて中分類で見ると、リスク値が最も低い業種と高い業種では19ポイントの開きがありました。
全国平均や卸売業・小売業と同等水準の業種もあれば、高い業種もある状況です。
卸売業・小売業の特徴的な回答
それでは、卸売業・小売業で働く人々からは、どのような回答傾向が見られたのでしょうか。
全国平均と比べて特徴的な結果が見られた設問を5つ紹介していきます。
「非常にたくさんの仕事をしなければならない」
ちがう・ややちがう | そうだ・まあそうだ | |
卸売業・小売業 | 25.9% | 74.1% |
全国平均 | 32.9% | 67.1% |
「仕事に満足だ」
満足・やや満足 | 不満足・やや不満足 | |
卸売業・小売業 | 61.1% | 38.9% |
全国平均 | 68.1% | 31.9% |
「内心腹立たしい」
ほとんどなかった・ときどきあった | ほとんどいつもあった・しばしばあった | |
卸売業・小売業 | 65.6% | 34.4% |
全国平均 | 72.4% | 27.6% |
「怒りを感じる」
ほとんどなかった・ときどきあった | ほとんどいつもあった・しばしばあった | |
卸売業・小売業 | 64.8% | 35.2% |
全国平均 | 71.5% | 28.5% |
「イライラしている」
ほとんどなかった・ときどきあった | ほとんどいつもあった・しばしばあった | |
卸売業・小売業 | 66.6% | 33.4% |
全国平均 | 73.2% | 26.8% |
「内心腹立たしい」「怒りを感じる」「イライラしている」というイライラ感の尺度を構成する3つの設問において、「ほとんどいつもあった・しばしばあった」と回答した割合が全国平均と比べて高くなっています。
つまり、卸売業・小売業に従事する人はストレスが身体の症状として表れている人が多い傾向にあります。
全国平均と比べて「非常にたくさんの仕事をしなければならない」の設問に対して「そうだ。まあそうだ」と回答している人が多いため、業種全体として仕事量が多い傾向にあることがわかります。
しかし、仕事量の問題で終わりにせずに、不良の理由はなんなのか、何が原因となっているのかを、会社や部署単位で把握していく姿勢が重要です。
さいごに
今回は卸売業・小売業について全国データの傾向から見た結果をお伝えしました。
業種の特性を把握し、自社の傾向をつかんでいただくきっかけにしていただけたらと思います。