研究レポート

ストレスチェックが示すコミュニケーションの重要性とは?職場の人間関係を良くするコツを紹介

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「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」

アルフレッド・アドラー(精神科医、心理学者)

かの有名なアルフレッド・アドラーが提唱したアドラー心理学の根底に流れる概念です。
職場における悩みやストレスの原因で常に上位に「人間関係の問題」が含まれます。
ストレスチェックにもコミュニケーションの頻度を問う設問があり、人間関係がメンタルヘルスに大きく影響していることがわかります。
職場環境を改善したいけど、何から手を付けたら良いかわからない……」そんな時は、コミュニケーションを見直してみてはいかがでしょうか。

・チームの人間関係をもっと良くしたい!
・コミュニケーションを活発にして、仕事のストレスを少しは軽減できる?
・明るい雰囲気で、笑い声も聞こえるような出社したくなる職場にしたい!

こんな想いをお持ち方へ、職場環境を良くするコミュニケーションのコツをわかりやすくお伝えします。
これを意識するだけでも、今日からコミュニケーションが少し得意な自分になれるかもしれませんよ。

ストレスチェックが示すコミュニケーションの重要性

あなたが仕事で困った時、誰に相談しますか?
ストレスチェックの設問の中に、職場でのコミュニケーション頻度を問う設問が3つあります。

<上司・同僚からのサポートを問う設問>

Q.どのくらい気軽に話ができますか?
Q.あなたが困った時、どのくらい頼りになりますか?
Q.あなたの個人的な問題を相談したら、どのくらいきいてくれますか?

「気軽に話ができて、困った時頼りになって、個人的な相談もきいてくれる」そんな存在が職場にいることは、メンタルヘルス対策として必要だとストレスチェックは示しています。
状況によって異なると思いますが、上司、同僚、友人、家族、親、カウンセラーなど、あなたが困った時に相談したいのは、このような相手ではないでしょうか。
反対に、「話をきいてくれない」「言ったらきっと怒られる」「言っても否定される」と感じる相手には相談しづらいものです。

ところで、そもそもコミュニケーションとはどんなものでしょう。
広辞苑には下記のように記載があります。

社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達。
言語・文字その他視覚・聴覚に訴える各種のものを媒介とする。

出所:広辞苑 第7版

つまりコミュニケーションとは、自分の気持ちや意見を相手に言語や非言語を用いて伝えることです。

職場の人間関係において重要な【承認欲求】とは

人間がもっとも興味がある人は「自分」です。
仲間よりも、友人よりも、家族よりも、人間がもっとも興味がある人、それは「自分」のことではないでしょうか。
「自分がどう思われているか」「自分とあの人との関係」「自分が楽しく働くためにはどうしたら良いか」「自分の気持ち」「自分の健康」など……。
もしかしたら、「自分よりもわが子のほうが大事!」という人もいるかもしれません。
しかし、それは「自分」の子どもだからですよね。
自分が守るべき存在であり、自分に関わることだから、わが子も自分を主体としているはずなのです。

「わかってほしい」「認めてほしい」

・(自分が一番興味のある)自分のことをわかってほしい。
・自分の気持ちや価値観をわかってほしい。
・自分がこんなにも努力していることを見てほしい、知ってほしい、認めてほしい。
・自分の存在自体を認めてほしい。

「わかってほしい」「認めてほしい」という承認欲求は、人間にとって根源的な欲求なのです。

<承認欲求を満たす方法>

・相手の言葉を要約して伝え返す
・感情を共鳴させる(一緒に笑う、一緒に怒る、一緒に驚く)
・言葉にして伝える

いくら心の中で承認しても、相手は「本当に分かってくれているのか?」と不安に思ってしまいます。
「頑張っているね」「そうなんだね」「うん、わかったよ」と言葉にして伝えることが重要です。
なかでも、何度もくり返されるフレーズは、相手が特にわかってほしい伝えたい事柄です。
そのフレーズをキャッチして伝え返すことで、相手は安心して承認されたと感じます。

職場環境を良くするコミュニケーションのコツ

ここからは、実際に職場の人間関係を良くするためのコツを2つ紹介します。

①きく

「きく」の漢字は3種類あります。
「聞く」「訊く」「聴く」ですね。
このうち特にコミュニケーションで重要なスキルは「訊く」と「聴く」の2つです。

【訊く】声をかける、尋ねる、質問すること

まずは相手に関心をもつことから始まります。

・相手は何に興味があるのか?
・好きなことは何か?
・どんな仕事をしているのか?
・どんな価値観を持っているのか?

名前を呼んで挨拶をするなど、自分から声をかける行為は立派なコミュニケーションです。
そこから「質問」をつかって会話を発展させましょう。
ポイントは、自分の興味があるものだけではなく、相手の興味関心に添った内容を選ぶことです。

「例の打合せ、大変そうだって言っていたけど、どうだった?」
「この資料の言い回しについて、〇〇さんはどう思う?」

クローズドクエスチョン(Yes、Noで答えられる質問)オープンクエスチョン(Why、Howを問い、回答の範囲を制限しない質問)を場面によって使い分けるとより自然に会話が広がります。
一問一答のような質問をくり返しすぎると、尋問のように問い詰められていると感じられる可能性もあり注意が必要ですが、職場での訊く行為は、相手の状況確認、意見を募る、お互いの知見共有にも役立ちます。

【聴く】耳と目と心できくこと

相手から相談ごとを持ちかけられた場合などには、聴き役に徹するスキルが求められます。
ただ「聞く」のではなく、主体的な姿勢で耳と目と心を傾けて傾聴することが「聴く」です。
また「聴く」は聴き入れるから転じて、相手の存在を受け入れ「聴す(ゆるす)」という意味もあるそうです。
以下にご紹介するのは、ある小学校の教室に掲示されていたものです。

<話のきき方~あいうえお~>

あ 相手を見て
い いい姿勢で
う うなずきながら
え 笑顔で(目が笑う)
お 終わりまできく

子どもでも大人でも話のきき方の大事なポイントは同じですね。
新型コロナウィルス感染症が5類に移行して久しいですが、マスクをしたまま顔の大部分が隠れた状態や、オンラインでの疑似的な対面コミュニケーションでは障害を感じることが多くあります。
これは、お互いに表情や感情が伝わりづらいためです。
しかし、「目は口ほどに物を言う」ということわざで表現されている通り、感情や想いを伝えることは可能です。
特に日本人は、主に目元で感情を表現する(欧米人は口元で表現する)ため、意識的に目元で感情を表現すると不足する情報を補完することができます。

②自他尊重

自分も、相手も大切にする自己表現をアサーション、またはアサーティブコミュニケーションと言います。
相手に配慮しながら、自分の気持ちや意見をその場にあった適切な態度で表現することであり、お互いにとって一番良い妥協点を探すコミュニケーション方法です。
「I am OK, You are OK」の精神ですね。

Iメッセージで伝える

自他尊重のポイントは、自分の考えは「Iメッセージで伝える」ことです。
まずは「訊く」と「聴く」で相手の話、相手の想いを受け止めましょう。
すべてを受け入れることができなくても大丈夫です。
「そうなんですね」「わかりました」と、まずは相手を受け止める。
自分の気持ちや意見を伝えるのは、相手の話を十分に聴き終わってからでも遅くありません。

Youメッセージ

「(あなたは)なんで連絡してこなかったの?心配をかけるってわからないの?」

【Iメッセージ】

「(わたしは)連絡をくれなかったからとても心配したよ。連絡できない状況だったの?」

Youメッセージは、相手を主語とした表現で、決めつけたり、相非難したりする意図で使われることが多いものです。
一方、Iメッセージは、私を主語としており、相手を傷つけることなく自分の要求や考えを伝えることができます。

・「私個人の意見は〇〇だけど、どうかな?」
・「△△してもらえると(私は)助かる」

相手の主張に対して、自分はどうしてもらいたいのか「具体的リクエスト」に変換して伝えることがポイントです。

今回は職場においてのコミュニケーションの基本についてコツをお伝えしました。
ほんの少し意識するだけで相手のリアクションが変化することを感じられると思います。
無意識にコツを活かしたコミュニケーションができるよう、意識してみましょう!

DL
ABOUT ME
【シニアコンサルタント】唐澤 崇
【保有資格】産業保健法務主任者/メンタルヘルス法務主任者/上級ハラスメントマネージャー/ハラスメントカウンセラー/健康経営アドバイザー 【コメント】人生の中での多くの時間を過ごす「職場」という環境において、「健康にいきいきと働き続ける」そんな当たり前の幸せを実現するお手伝いとして、企業へのコンサルティングだけでなく、実際に現場で働く従業員のみなさんとワークショップや研修、カウンセリングなどを通じてかかわりお手伝いをしています。