「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」といったいわゆる日本的経営の「三種の神器」も廃れ、より良い環境を求めて転職を選択する人も増えていることから、優秀な人材確保は日本全体の企業の大きな命題といえます。
人材流出はある程度は避けられないとはいえ、ネガティブな理由による離職の悪循環が続いている場合には、職場環境を見直すなど再発防止策を講じる必要があります。
従業員に仕事を辞めたいと言われたら?
従業員から離職を伝えられるのはいつも突然であり、職場としては混乱とともにその対応に追われるケースが多いのではないでしょうか。
たった1人の離職でも、業務の引継ぎが発生し、他ほかのメンバーに1人分の業務負荷がのしかかるだけでなく、新たに採用するには、そのためのコストや労力が生じます。
また、退職や転職を迷っている段階で、上司や職場に相談することは珍しく、多くの場合、上司が話を受けたときには、離職の意志が固まっているであるケースがほとんどです。
もし従業員から「仕事を辞めたい」と言われた場合、あなたならどのように対応しますか。残念ながら、その場で引き留めようとしても、意思決定後であるためにそれほど効果はありません。
では離職を食い止めるためにはどのような対応が必要なのでしょうか。
離職を防ぐには、まず日頃の対応見直しから
前提として、従業員が「仕事を辞めたい」と思うには必ず理由が存在します。
そこで従業員の離職を食い止めるためには、日頃から本人の言動をよく観察し、「兆し」を捉えることが必要です。
<転職入職者が前職を辞めた理由別割合仕事を辞めたい理由>
労働時間、休日などの労働条件が悪かった
人間関係が好ましくなかった
給与など収入が少なかった
※多い順、定年などの理由除く
<出所>厚生労働省「令和4年度 雇用動向調査結果の概況」
離職を防ぐには、まず、これら「理由」を防ぐことが重要です。
そのためには、以下のような施策により、従業員が声を発せられるような環境、仕事に関する相談がしやすい関係性を築いておくことが必要です。
<職場にける離職対策>
・ コミュニケーション量を増やす
・ 部下が納得できる評価をする
・ 適切なフィードバック
・ 業務量の調整
・ キャリア支援
・ 仕事の適性をはかる
環境や関係性が十分に構築されている環境であれば、不満からの離職軽減が予想されます。
仕事を辞めたい理由がストレスだった場合の対処法
もし離職理由がストレスやメンタルヘルスに関するものだった場合は、以下の対応も検討しましょう。
・産業医面談を勧める
メンタルヘルスに関する対応を上司1人が担う必要はありません。
産業医ではなく、保健師やカウンセラーでも構いません。
第三者的な立場で話せる専門職に頼ることも伝えましょう。
・休職を勧める
メンタルヘルス不調が考えられる場合は、重要な決断を迫らないほうが良いと言いわれています。
具合の悪い状態で判断力が鈍っているため、まずは体調回復が最優先です。
退職のために、まずは休職など、決断の先延ばしをすることが双方にとってメリットがある場合があります。
・配置換えを検討する
ハラスメントや上司との関係性に起因する場合は、配置換えも検討しましょう。
また本人の適性や希望に沿って部署変更をすることで、メンタルヘルス不調が改善したりより能力を発揮できたりするケースもあります。
・職場改善に取り組む
日々の業務フローやコミュニケーション方法の見直しを図ることで、離職の悪循環を断ち切るよう努めましょう。
ストレスチェック結果や従業員の声などから、どのようにすればより働きやすい職場になるか、検討する機会があると望ましいですね。
ストレスのない職場にするにはどうすればいい?
では、どのような取り組みを進めれば、「より働きやすい職場環境」になるでしょうか。
以下では、いくつか取り組み方法をご紹介します。
職場環境を整える
ストレスのない職場にするうえでは、「職場環境」の整備が欠かせません。
職場環境とは「物理的環境」および「人間関係」を指し、ドクタートラストでは、良好な職場環境の維持には以下4要素が必要と考えています。
・ チームワークがある
・ 会話の回数が多い
・ 笑顔が溢れている
・ いきいきと働き仕事に誇りを持っている
ストレスチェックを導入する
ドクタートラストのストレスチェック集団分析では、独自分析「職場環境指数 TRUSTY SCORE」を算出、信頼関係の構築された安心・安全な職場環境であるかを数値でお示ししています。
TRUSTY SCOREは、「尊重・尊敬」「問題解決・挽回」「助け合い・挑戦」「話しやすさ・自然体」の4軸から構成されており、これらが満たされているほど、信頼関係が強く、生産性の高い職場と考えられます。
メンタルヘルス不調を防ぐことはもちろん、組織としてはいきいきと生産性高く働ける状態を目指していきたいですね。
社内相談窓口を設置する
「社内相談窓口」は、ハラスメント対策の観点からも設置しなくてはなりません。
また、ただ設置するだけではなく、「安心して相談できる場所」として有効活用することが離職の予防となります。
<相談窓口のポイント>
・ 気兼ねなく話せる、聞いてもらえる
・ 相談したことが業務評価につながらない
・ 秘密が漏れない
このような条件を満たすうえでは、第三者機関のサービスを利用し外部相談窓口を設けることがお勧めです。
産業医や外部機関と連携する
相談を受けた場合、上司や人事などが単独で解決しようとする必要はありません。
もちろん個人情報保護は重要ですが、産業医やカウンセラーなどの専門家へ連携し、チーム単位で対応することが得策です。
まとめ
現在では職場のコミュニケーションは「ホウレンソウ」でなく「ザッソウ」が大事といわれるようになりました。
職場で必要なコミュニケーションは、報告・連絡・相談という一方通行のものでなく、雑談の延長で、さまざまなことを相談できるような双方向のものを目指す必要があります。
上司も部下も一個人として尊重され、立場は異なれども同じチームの一員として気兼ねなく意見や相談をすることができる関係性が築ければおのず自然と「仕事を辞めたい」という突然の離職宣告は免れるのではないでしょうか。