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「過労死」を正しく理解し、ストレスチェック集団分析を活用した安全配慮を!

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「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡やこれらの疾患を指します。
遠い他人事のように感じるものか、それともいつか自分や自分の大切な人にふりかかる身近なものでしょうか。
このコラムをきっかけに、自分や自分の大切な人のために過労死について知り、働き方を振り返る機会にしていただければ嬉しいです。

そもそも「過労死等」の定義とは?

「過労死等」の言葉を知っている人は多いでしょうが、その定義まで正しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
過労死等とは過労死等防止対策推進法2条において次のように定義されています。

第2条 (前略)法律において「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。
出所:過労死等防止対策推進法

上記定義より、過労死等は以下のように整理ができます。

・ 業務における過重な負荷による死亡(脳血管疾患、心臓疾患を原因とする)
・ 業務における強い心理的負荷による自殺(精神障害を原因とする)
・ 業務における疾患や障害(脳血管疾患、心臓疾患、精神障害)

どんな状況で過労死等が起こる?

過労死等を招きやすい主な要因として、以下が挙げられます。

・ 長時間労働(目安として月45時間以上)
・ 強い不安、悩み等のメンタル不調
・ 睡眠不足
・ ハラスメント

2023年10月に厚生労働省が発表した「令和4年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(令和5年版過労死等防止対策白書)
によると、2022年の労働者1人当たりの年間総実労働時間は1,633時間で2021年と同様であり、長期的に減少傾向が続いています。

2023年8月に厚生労働省が発表した「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、最新データでは82.2%でした。
また、ストレスとなっている事柄としては「仕事の量」が最も多く36.3%、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」35.9%、「仕事の質」27.1%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(26.2%)でした。

過労死等の要因となる長時間労働を是正し、ワーク・ライフ・バランスを図るとともに、メンタルヘルス面においても良好な職場環境を築いていくことが重要です。

過労死等を防止するために~相談先があることがポイント~

では、企業として過労死等を起こさないために企業としては具体的にどのようなことをすべきでしょうか。
過労死等を起こさないための対策としては、以下が挙げられます。

・ 労働条件の適性化
・ 過重労働対策
・ ワーク・ライフ・バランスの向上
・ 相談先の整備 (特に外部窓相談口の明確化)
・ 職場環境(特にコミュニケーション)の見直し
・ ストレスチェック集団分析を活用した傾向の把握

組織単位で制度を構築するとともに、実際にその制度を利用できるしくみや風土があること、またチーム単位でも認識を統一していくことが大切です。
なかでもメンタルヘルス不調や自殺という大事に至ることを防ぐには、「相談先があること」がポイントです。
なぜなら、人間は悩みを抱えている状態で冷静な思考を持つことは難しく、正常な判断ができないものだからです。
アウトプットすることで初めて得られる考え方や思考・状況の整理が適う効果があります。

では、もし自分が困ったとき「この人なら話せる」という人が何人思い浮かびますか?
厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、労働者が相談できる相手は職場では「同僚」が最も多く68.0%、以下「上司」65.0%、「人事労務担当者」12.5%と続きました。

相談内容によっては、産業医や保健師、カウンセラーなどの専門家が有用な場合もあるため、職場としてはいくつか相談先の選択肢を用意し、広くアナウンスしておくことが求められます。

過労死等を防ぐためにストレスチェックの集団分析が有効

過労死対策の一つとして重要なのがメンタルヘルスケアです。
仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスは個人だけの問題ではありません。
ストレスチェックの集団分析の結果を活用して、ストレスチェック実施時点での労働者の主観としての職場の状況を確認することで、ストレス要因や緩衝要因の程度、業務負荷の傾向、人間関係等のリスクを知ることができます。

ストレスチェック集団分析結果として確認できる傾向は決して評価ではありません。
全国平均や全社傾向、ほかの部署の傾向などと比較して「良い」「悪い」と評価のように捉えてしまうとミスリードになってしまうこともあります。
さらに、ストレスチェックの集団分析結果は、受検時期の業務の繁閑の状況や人員の配置状況などに影響を大きく受けやすいため、実情と照らし合わせて、同じストレス反応や各尺度の傾向でも、それぞれ「なぜその特徴が見られるのか?」の要因を把握する参考として活かしましょう。
特に、業務内容や仕事の進め方などがそれぞれ異なる部署やチームなどの集団ごとに、業務特性から考え、許容すべき負担やストレスなのか、それとも本来発生しなくてもよい不必要なストレスなのかなど、同じような傾向が見られる場合でもしっかりと集団ごとの特性に合わせて整理することが重要です。

また、ストレスチェック集団分析結果では、不良な結果ばかりに着目しがちですが、良好な結果にも注目すべきです。
分析集団において所属する労働者の方々がポジティブに捉えているポイントであり、強みや働きがい、ワーク・エンゲイジメントの源泉にもなり得る可能性があるためです。
そのため、良好な結果についても「なぜメンバーはポジティブに捉えているのか」の理由をしっかり把握し言語化することで、集団の中で共通認識化を行えば再現性も高まりやすくなります。
ストレスチェック集団分析はネガティブな面だけを捉えるものではなく、集団の強みやポジティブな面を改めて認識する機会にも役立てられるのです。

また、同じストレスや負担を感じても、働きがいとして昇華できる方もいれば、負担としてストレスとしてしまう方もいます。
自身をフラットな状態やプラスの状態に保つことでストレスの受け取り方が大きく変化してレジリエンスの高い状態も目指せる可能性も高まります。
ネガティブな要因を改善するだけではなく、ポジティブな要因を認知し伸ばす方向でもストレスチェック集団分析を参考の一つとしてぜひ活かしていきましょう。

集団分析結果の活用により、メンタルヘルス対策に取り組むことで過労死等のリスクを一定数減らしていくことにもつながります。

まとめ「しごとより、いのち」

仕事が原因で命をなくすことがあってはなりません。
ストレスチェックの集団分析から得た結果を活用することで、組織の資源として資産化することが可能になりました。
このようにストレスチェック集団分析の活用は、これまで組織内に散らばっていた情報を集約して、各チームの問題点や改善策を導き出す手段になるでしょう。

ドクタートラストでは、健康にいきいき働く人を増やすことを目標に、ストレスチェックサービスの実施をはじめ、さまざまな健康管理サービスを展開しております。
産業医、保健師、カウンセラーの導入をはじめ、職場環境改善のための研修・セミナーも行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

<参考>
・ 厚生労働省「令和5年版過労死等防止対策白書」
・ 厚生労働省「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」

ABOUT ME
【シニアコンサルタント】唐澤 崇
【保有資格】産業保健法務主任者/メンタルヘルス法務主任者/上級ハラスメントマネージャー/ハラスメントカウンセラー/健康経営アドバイザー 【コメント】人生の中での多くの時間を過ごす「職場」という環境において、「健康にいきいきと働き続ける」そんな当たり前の幸せを実現するお手伝いとして、企業へのコンサルティングだけでなく、実際に現場で働く従業員のみなさんとワークショップや研修、カウンセリングなどを通じてかかわりお手伝いをしています。