近年、労働環境の悪化や長時間労働などが原因で、労働者の心身の健康問題が深刻化しています。こうした課題に対応するため、2015年に施行された改正労働安全衛生法に基づき、一定規模以上の企業は毎年、全労働者を対象としたストレスチェックを実施することが義務付けられています。
しかし、せっかくの制度にもかかわらず、受検率が低迷しているという課題があります。
そこで今回は、ストレスチェックの受検率100%を目指すためのヒントを紹介いたします。
1.社員目線に立った丁寧な説明と周知
ストレスチェックの受検率を上げるためには、まず社員一人ひとりが制度の内容を理解し、自らの健康と向き合う意義を感じることが重要です。
そのためには、単に法令上の義務であると伝えるだけでなく、ストレスチェックの目的や意義、受検のメリット、結果の活用方法などを分かりやすく、丁寧に説明する必要があります。
ストレスチェックを実施する目的については以下の記事で詳しく解説をしています。
具体的には、パンフレットや社内報、イントラネットなどを活用して、ストレスチェックに関する情報を定期的に発信するほか、社員向けの説明会を開催したり、個別相談を受け付ける窓口を設けたりするのも有効です。
さらに、上司や先輩社員が率先して受検し、その経験を共有することで、周囲の社員にも受検を促す効果が期待できます。
2.受検しやすい環境の整備
時間や場所の制約が受検率低下の原因となる場合があります。
そこで、限られた時間の中で効率的に受検できるよう、Webやスマートフォンアプリなど、多様な受検方法を導入することが重要です。また、夜間や休日にも受検できる体制を整えたり、社内の一室を検査会場として確保したりすることで、受検のハードルを下げることができます。
さらに、繁忙期を避けて受検期間を設定したり、業務時間内に受検できる時間を設けたりする配慮も必要です。体調不良や時間的な制約がある社員に対しては、個別に対応できるよう柔軟な運用を検討することも有効です。
3.不安や懸念への丁寧な対応
ストレスチェックの結果が評価につながるのではないかと不安に思っている社員も少なくありません。そのため、結果の取り扱いについて明確なルールを定め、社員に周知することが重要です。具体的には、個人の結果は厳重に管理し、人事考課や昇進昇格などに利用することはないことを明示する必要があります。
また、ストレスチェックの結果に基づいて、個々の社員に合わせた健康指導やカウンセリングを提供することが重要です。これは、社員の健康状態を改善し、ストレスを軽減するだけでなく、企業全体の健康経営にも繋がる取り組みとなります。
4.継続的な取り組みと改善
ストレスチェックは、単発の取り組みではなく、継続的に実施していくことが重要です。
毎年同じ時期に実施することで、社員のストレス状態の変化が把握できるため、効果的な対策を講じる手助けになります。また、受検率や結果の内容などを分析し、必要に応じて制度の見直しを行うことも重要です。
さらに、外部の専門機関を活用したり、研修会を開催したりすることで、担当者の知識やスキルを向上させることも有効です。
ストレスチェック受験率100%を目指す
ストレスチェックの受検率を向上させることは、社員一人ひとりの心身の健康を守るだけでなく、企業全体の生産性向上や離職率の低減にもつながる重要な取り組みです。
今回紹介したヒントを参考に、社員目線に立った丁寧な説明と周知、受検しやすい環境の整備、不安や懸念への丁寧な対応、継続的な取り組みと改善などを行い、企業全体の健康経営に積極的に取り組んでいきましょう。