近年、AI技術の進歩が加速し、人間の手が必要とされない仕事や職種が今後増えてくることが予想されます。
そんななか、2023年から2024年の人事領域におけるトレンドワードとして、「リスキリング」が挙げられます。
本日は、リスキリングの必要性から実施方法について解説していきます。
リスキリングとは?
リスキリングとは、業務において必要なスキルを習得することです。
主に市場のニーズがあるところに焦点を当てて学ぶことが一般的です。
企業のリスキリングへの認識
厚生労働省が行った企業のリスキリングへの認識に関するアンケート(企業規模別)によると、従業員数1,001名以上の大企業において「取り組む必要がある」と回答した割合は86%、301~1,000名の 中堅企業においては71%、300名以下の中小企業では64%でした。
以上の結果から考えると、企業規模が大きいほどリスキリングに取り組む必要性を感じているようです。
リスキリングに取り組む必要はないと考える理由については「他の優先課題がある」が最も多く39%、次いで「事業戦略上特に必要がない」が30%、「取り組みを進められる人材が社内にいない」が26%となりました。
リスキリングの必要性と導入事例
例えば、ある製品を製造している企業が製造ロボットを設置したとします。
作業をロボットで賄えてしまうと、その業務に携わっていた人たちは働く場を失ってしまいます。
しかし、製造ロボットのプログラム設計やシステム管理などの業務はロボットではこなせないため、人間が対応するケースがほとんどです。
こういった状況で役立つのが「リスキリング」と言えるでしょう。
人間にしか対応できないような業務に関係するスキル・知識を習得しておけば、従業員は別の業務に就けるので退職率は必然と下がります。
導入事例
リスキリングの導入事例として、日立製作所は2022年度、従業員一人ひとりのキャリア志向にあわせた自主的な学びを支援するため学習体験プラットフォームであるLXPを導入しました。
これは、AIが自動分析し従業員それぞれに合わせたスキル強化のための研修や教材を提案してくれるというものです。
20,000以上のコースから選ぶことが可能であり、従業員はオンラインで無料受講でき、すきま時間で勉強できるため学習意欲向上に成功しました。
リスキリング実施までのステップ
「リスキリングでスキルを習得しましょう!」と言っても何から始めていいのか分からない方も多いでしょう
まずは、どんな方法で実施するかを決めるための中身から固めていきましょう。
- ①何を習得すればよいか決める
企業の目標や業務内容によって必要になってくるスキルは違ってきます。
事業内容や業績、経営方針などのデータを参考にしてどんなスキルが必要になってくるか今一度検討しましょう。
- ②使用するプログラムを考える
従業員が効率よくスキルを習得できるプログラムを選定しましょう。
併せて、自社で開発できるのか、外部サービスを利用するのかも考えましょう。
プログラム受講の順番やそれぞれの習得状況にも目を配ることが非常に重要です。
- ③使用する教材を決める
WEBで使える教材なのか、紙でのテキストなのかなど、自社での予算と実際にかかるコストを照らし合わせながら決めましょう。
- ④従業員へ周知
プログラムと教材が決まったら、従業員へ周知しましょう。
決められた時間に受講するのか、スキマ時間で受講できるのかなど、社内のルールも細かく決めておくことが大切です。
- ⑤習得したスキルを実際の業務で活用してもらう
せっかく習得してもらったスキルも、社内で実践する場がなければ、リスキリングの意味があるとは言えません。
習得したスキルや知識を実践で活かすことができれば、高い費用対効果が見込めるでしょう。
まとめ
リスキリングは2022年政府によって「個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる」との方針が発表され、2023年には厚生労働省が資格学習の費用を助成する「教育訓練給付」補助率の引き上げなど、デジタル人材の増加促進を図っていることから注目度が高まっています。
時代の移り変わりが激しい現代では、1つのスキルのみで働き続けることは難しくなってきています。
また、個人だけでなく多くの企業にとってもリスキリングの必要性が高まっており、正しい知識をつけた上で企業に合ったスキルを身につけた従業員を増やしていくことが今後は重要になってくるでしょう。
<参考>
厚生労働省「経済社会と働き方の変化等について」
株式会社日立アカデミー「自分のキャリアを自分でつくる。 学びをもっと身近に、LXPによる新しい学習体験。」