組織内の対立はストレスの原因であり、避けて通りたいもの――。
果たしてこう言い切ってしまってよいのでしょうか。
組織内で対立が生じると、どうしてもネガティブなこととして受け止めがちですが、こうしたときはピンチをチャンスとして捉えて解決を図ろうとする「コンフリクトマネジメント」を活用してみましょう。
今回は、このコンフリクトマネジメントをわかりやすく解説します。
コンフリクトマネジメントとは
コンフリクトとは「葛藤、対立、衝突」を意味する言葉です。
そして、ネガティブに捉えられやすい組織内の対立(コンフリクト)を、職場環境改善の活動の一つ、組織の成長や課題の解決の機会としてポジティブに活用しようとするのが「コンフリクトマネジメント」です。
人の価値観はそれぞれ違います。
似ている部分があっても自分と100%同じ考えの人はいません。
つまり、多様な人材が集まる組織であればこそ、大小問わず、コンフリクトの発生は不可避といえます。
職場でコンフリクトを経験したとき、どうしても「相手に負けたら嫌だ」、「舐められて自分が損をしたくない」と考えてしまったことはありませんか。
このような場面で「コンフリクトマネジメント」が適切に発揮されれば、自由に意見を出し合いながら課題解決、成長の機会へとつながることで、衝突した双方にとってwin-winの結果を目指すことができます。
ただし、「コンフリクトマネジメント」の前提として、組織内でコンフリクトが起きることは仕方がないという認識や、「コンフリクトマネジメント」が解決方法を探るもの、「良い悪い」という価値判断ではなく問題に焦点を当てるものであるという認識が必要です。
コンフリクトマネジメントのポイント
では、コンフリクトマネジメントのポイントを見ていきましょう。
組織内でのコンフリクトを「当然のもの」であり、「成長の機会」と認識するまで時間がかかるものです。
自分自身が意識してメンバーに声かけをしてみる、自分の身にコンフリクトが起きたときに注意してコミュニケーションを行うことが重要です。
具体的にはまず、コミュニケーションにおいては、意識して相手の意見を聞くことが欠かせません。
相手が明らかに事実と異なる意見を話したとしても、目を合わせ、相槌を行うようにして意見を受け入れる姿勢を見せ、何を根拠に、なぜその意見を伝えることになったのかの経緯を聞くようにしてください。
コンフリクトの場面だと、話を途中で遮られることにより、相手の負の感情が大きくなる可能性もあります。
そのため余裕をもって話し合う時間を設定することも必要です。
次に、自分の意見をアサーティブ(素直)に伝え、自分も相手も納得できる着地点を探していきましょう。
なお、「言いたいことを伝える」なかでも、ハラスメントとなるような表現は避けなければなりません。
組織内で対立があったときはどうすればいいか
組織内で対立があった際は、現状を確認し、ミーティングの機会を持つようにしましょう。
このとき「問題に焦点を当てる」、「相手を頭ごなしに否定しない」などルールを決めておくとよりスムーズに進めやすいでしょう。
手順としては、まず、対立の原因を理解します。
どういった背景があり、どんな意見になったのか、なぜコンフリクトが起きてしまっているのか、なぜ問題が大きくなったのかを改めて整理しましょう。
なお、対立している当事者のみで解決が難しい場合は中立的な第三者が話し合いに出席すると、穏やかな解決につなげやすいです。
次に、原因を把握した後はその原因に対する、意見や感情を双方に出してもらうようにしましょう。あくまでも個人を攻撃するものではなく、問題に焦点を当てるようにしてください。
そして、次に客観的な解決策を出す、納得が得られる落としどころを見つけるようにしましょう。
もし、人事担当者や管理職などで対立を把握した場合は、第三者として会議に参加することもあるでしょう。その際は解決に向かうよう注意して進行します。
組織内のコンフリクトにもさまざまあり、メンタル不調やハラスメントなどの問題に対して対応が困難な際には産業医や産業保健スタッフ、弁護士などの協力も得ることも視野に入れましょう。
まとめ
心理的安全性が保たれた環境であれば、コンフリクトによって多様な意見が出やすくなる、その背景にある組織課題が明らかになるなど、悪いことばかりではありません。
コンフリクトが怖くない状況であり、相手の意見にも納得できる環境であると、社員は人間関係で悩むことが少なくなることでストレスの負荷が減ることだけではなく、離職率の低下も期待できるでしょう。
また、コンフリクトマネジメントを行う上では、日々の信頼関係の構築、そして自らの行動も振り返り、今度同じような対立を生じさせないようにするために定期的に見直す機会を設定することも必要です。
特に、自分の仕事もありなおかつ組織でリーダーを担わなければならない方、コンフリクトマネジメントを意識し、チーム運営や成長に役立ててみてはいかがでしょうか。
<参考>
・ 「産業保健現場のコンフリクトマネジメント」(メディカ出版『産業保健と看護』2024年No.4)