制度

50人未満の事業場へのストレスチェック義務化拡大なるか?その影響と課題

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2024年10月10日、厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」から、「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ案」(以下、とりまとめ案)が公表されました。
とりまとめ案では、ストレスチェック制度の実施義務が50人未満の事業場へと拡大される方向で検討が進められているという旨が盛り込まれていたことから、日本の労働環境を考える上で非常に大きな一歩と言えるでしょう。
従業員50人以上の事業場に義務づけられ、50人未満の事業場は努力義務とされているなど、一定規模以上の企業を中心に導入されてきた現行のストレスチェック制度が、小規模事業場へと広がることで、より多くの労働者のメンタルヘルスが守られることが期待されます。

小規模事業場への波及効果と期待

2023年6月に総務省・経済産業省が公表した「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)」によると、従業員数50人未満の事業場は、全事業場のおよそ95.9%を占めます。また50人未満の事業場で働く労働者は、全労働者のおよそ57.6%を占めています。
小規模事業場は、日本経済の根幹を支える存在であり、多くの労働者が働いています。しかし、大企業にくらべて、人的・財政的な余裕が限られていることから、メンタルヘルス対策が後回しになりがちという側面もありました。今回のストレスチェック制度の義務化を拡大する方向性は、小規模事業場においても、従業員のメンタルヘルス問題に積極的に取り組む機運を高めるきっかけとなることが期待されます。

具体的には、以下のような効果が期待できます。

・ 早期発見・早期対応:ストレスチェックの実施により、従業員の心の不調を早期に発見し、適切な支援につなげることができます。
・ 離職防止:従業員のメンタルヘルスが改善されれば、離職率の低下につながり、企業の生産性向上にも貢献できます。また、集団分析を行うことによって、離職率が高く、常に人材不足に陥っている企業においては、解決の糸口を見つけることができるでしょう。
・ 企業イメージ向上:メンタルヘルス対策に力を入れている企業は、従業員だけでなく、顧客からも高い評価を得やすくなります。

課題と今後の展望

一方で、ストレスチェック制度の実施義務が拡大されることで、いくつかの課題も浮かび上がってきます。

・ 企業側の負担:ストレスチェックの実施には、一定の費用や手間がかかります。特に、小規模事業場にとっては、新たな負担となる可能性があります。
・ 専門知識の不足: ストレスチェックの結果に基づいた適切な対応を行うためには、専門的な知識が必要です。小規模事業場では、そのための体制が整っていない場合も考えられます。
・ 制度の運用に関する課題: 50人未満の事業場への拡大にあたり、具体的な運用方法や、小規模事業場への支援策など、さまざまな課題を解決していく必要があります。

これらの課題を克服するためには、国や自治体による情報提供や専門の外部機関による支援が不可欠です。また、ストレスチェックツールや、従業員へのメンタルヘルス教育に関する情報についてもあらかじめ十分に収集しておく必要があります。
また、中間とりまとめ案では、50人未満の小規模事業場でのストレスチェック実施については、プライバシー保護の観点からも、外部機関の活用が推奨されています。

まとめ

ストレスチェック義務化の拡大は、日本の労働環境改善に向けた大きな一歩ですが、その効果を最大限に引き出すためには、関係者全員が協力して課題解決に取り組んでいく必要があります。
各企業においてはストレスチェックを導入するだけでなく、従業員の心の声に耳を傾け、働きやすい職場づくりに努めることが大切です。また、国や自治体は、 小規模事業場への支援策を充実させ、制度の円滑な運用を図る必要があります。
今回の制度改正の検討を機に、日本社会全体でメンタルヘルス問題に対する意識が高まり、より働きやすい社会が実現することを期待します。

<参考>
・ 厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ案」
・ 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)」

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【コンサルタント】池田 三菜子
子育てをしながらのチームマネジメントの経験から、自身の失敗談も含めて、現場の声に寄り添った情報を発信してまいります。 「残業時間を減らす業務改革」と「個人の得意分野を生かすチーム作り」をモットーに、一社でも多く働きやすい職場づくりのお手伝いをさせていただきます。