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自己実現の欲求がモチベーションを創る

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組織で働いていると、「自分の仕事に意義を見出せない」、「部下のやる気が上がらない」といった悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、自身や部下のモチベーションに関して参考にしていただきたい自己実現の概念についてお伝えしていきます。

自己実現とは

自己実現とは自分の中にある可能性を最大限に信じて実現に向かうことを指し、アメリカの心理学者であるマズローの理論が有名です。
自己実現の欲求は人の究極的な成長欲求であるとされていますが、この段階に至るまでには、満たされるべきほかの欲求があるといわれています。
そしてそれらの欲求を基底的なものから上層のものまで分類したものを欲求階層説と呼ばれています。

欲求階層説

欲求階層説では欲求がピラミッド型の構造で表されており、上位の欲求は下位の欲求が部分的にでも満たされて初めて発生すると考えられています。
具体的な欲求の分類は以下の通りです。

第1欲求:生理的欲求

第1欲求「生理的欲求」は、寝たい、食べたい、排泄したいなど、生きていくために必要とされる最も基本的な欲求のことです。
この生理的な欲求が満たされると満足する生物は多いですが、人の場合は次の欲求を満たしたいと思うのが一般的です。

第2欲求:安全・安定の欲求

第2欲求「安全・安定の欲求」には、安心できる環境にいたい、健康を維持したい、経済的な安定がほしい、などの欲求が含まれています。
ここでの安心できる環境というのは、プライベートにとどまらず、職場環境も含んで考えてよいでしょう。
そのため、ハラスメントが生じていたり、労働環境が整っていなかったりする職場では、この安全・安定の欲求が欠乏状態に陥りやすいかもしれません。

第3欲求:所属・愛情の欲求

第2欲求「安全・安定の欲求」が満たされると、友達がほしい、コミュニティに入りたい、家族に愛されたい、といった第3欲求「所属・愛情の欲求」が生まれます。
この欲求が満たされていないと、孤独を感じやすく、社会からも見放された感覚に陥りやすくなることが考えられます。
職場に置き換えると、気軽に相談ができる同僚や上司がいることや、雑談をしやすい環境にあるかどうか等がポイントになると考えられます。

第4欲求:承認の欲求

第4欲求「承認の欲求」は、他者から認められたい、尊重されたいという欲求を指します。
さらに、ここで述べる尊重には称賛や名声などのほかに、自尊心も含まれています。
そのため、職場においては、評価の透明性だけではなく、新しい技術や能力を身につけたりすることも、このレベルの欲求を満たすカギとなるかもしれません。

第5欲求:自己実現の欲求

第1~4の欲求が満たされると、最終段階としてより創造的な目標を実現しようとする第5欲求「自己実現の欲求」が現れるとされています。
これは自分の精神を成長させたいという自発的な要求であり、他者の評価に依存するものではありません。
つまりエネルギーが他者から自己へと向くようになるのです。

まとめ

今回は自己実現の概念について欲求階層説をお伝えしてきました。第1~2の欲求は具体的な物や環境との関わりが強く、第3、4の欲求は人との相互的なやり取りで生じる欲求となります。したがってモチベーションを上げたいと思ったときには、成功報酬といった外的な動機づけだけに期待をするよりも、置かれている環境や周囲との関係性、自分自身の能力を見つめなおすことが近道となるかもしれません。
ここまでたくさんのことお伝えしましたが、最後に強調しておきたいことは、自己実現を達成できたかどうかの結果が重要なのではありません。
自分を成長させたいという、自己実現に向かう志向性が大切です。
今回お伝えした内容が万人に当てはまるとは限りませんが、セルフチェックや部下の状態を把握する方法の一つとして、各欲求がどれくらい満たされているかを振り返っていただければ幸いです。

<参考>
・ 無藤隆、森敏明、遠藤由美、玉瀬耕治『心理学』(有斐閣、2004年)
・ 中島義明、安藤清志、子安増生、坂野雄二、繁桝算男、立花政夫、箱田裕司編『心理学辞典』(有斐閣、1999年)
・ 田中正人著、齊藤勇監修『図解 心理学用語大全: 人物と用語でたどる心の学問』(誠文堂新光社、2020年)

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【公認心理師】福田 築
【保有資格】公認心理師、臨床心理士、臨床発達心理士 【コメント】 家族療法やブリーフセラピー、発達支援を中心に学んできました。現在は心理師としてコミュニケーションやメンタルヘルスなどのセミナーを実施しています。悩みが生じたときに、「bestの解決」よりも、「betterの変化」を探すことで状況が好転することもあるので、セミナーやコラムを通して皆さんのちょっとした変化につながるよう、情報をお伝えしていきます。