2024年5月に改正された育児・介護休業法が、2025年4月1日以降、段階的に施行されます。
今回の改正では、「仕事と育児・介護の両立」に主眼が置かれ、育児では柔軟な働き方の実現するための措置、介護では介護離職防止のための環境整備などが行われます。
育児・介護との両立ができる働きやすい環境であることが働く意欲にもつながり、人材の定着や職場の活力につながります。
そこで2回に分けて改正育児・介護休業法のポイント、および企業に求められる対応をわかりやすく解説します。
後編となる今回は「介護編」です。
団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」も話題です。働き続けられる職場環境づくりのため、把握しておきましょう。
改正育児・介護休業法の「介護分野」はここに注目!
改正育児・介護休業法は2025年4月1日以降、施行されます。
以下では、介護に関する改正ポイントを紹介します。
2025年4月1日から施行~介護離職防止のための雇用環境の整備が進む~
① 介護休暇の見直し
介護休暇を取得できる対象の要件が緩和されます。介護休業の対象となる家族の範囲が広がり、取得しやすくなります。
具体的には、いままで除外されていた継続雇用期間6カ月未満の従業員も取得できるようになり、除外要件が週の所定労働日数が2日以下の従業員のみとなります。
② 介護離職防止のための環境整備
介護離職防止のためには、両立を進めるために介護休業や介護両立支援制度等(介護休暇、所定外労働や深夜業などの制限)の申し出がスムーズに行われる必要があります。
事業主は以下のいずれかの措置を講じることが義務づけられます。
・ 研修の実施
・ 相談窓口の設置
・ 自社の従業員の介護休業や介護両立支援制度等にまつわる事例の収集と提供
・ 自社の従業員に対して介護休業や介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
上記いずれかの措置で問題ありませんが、さらに望ましいのは組織にあった措置を複数講じることです。
③ 介護離職防止のための個別の従業員への周知とヒアリングなど
1. 意向聴取
事業主は介護に直面した旨の申し出を行った従業員に対して、仕事と介護の両立に関して、面談や書面を交付するなどの個別で意向を聴取しなければなりません。
<周知事項>
① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
② 介護休業・介護両立支援制度等の申し出先(例:人事部、担当者など)
③ 介護給付金に関すること
2. 介護に直面する前の従業員への情報提供
事業主は従業員に対して面談や書面の交付などで介護休業制度等に関する情報提供を行わなければなりません。
情報提供の際に「介護休業制度」は「介護の体制を構築するための一定期間の休業であるもの」という制度の趣旨や目的について伝えること、介護保険制度について周知することが望ましいです。
<情報提供期間>
いずれかの期間で情報提供を行う必要があります。
① 従業員が40歳の誕生日前日の属する年度(1年間)
② 従業員が40歳の誕生日から1年間
<情報提供事項>
① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度(制度の内容)
② 介護休業・介護両立支援制度等の申し出先(例:人事部、担当者など)
③ 介護給付金に関すること
厚生労働省は介護離職防止のため事業主が活用できるよう、資料を出しています。
社内用のアレンジを行い、周知等に役立ててください。
・ 厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」
※個別周知・意向確認、情報提供、事例紹介、制度・方針周知ポスター例
・ 厚生労働省「介護保険制度について(40歳になられた方(第2号被保険者)向け」
※英語、中国語等多言語対応版のリーフレットあり
④ 介護のためのテレワーク導入(努力義務)
要介護状態の家族を介護する従業員が、テレワークを選択できるようにすることが事業主の努力義務となります。
本人の対処と職場における対応とは?
介護は、多くの人が直面する可能性があります。
加齢とともに介護が必要になる人もいれば、徐々に突然のけがや病気により入院などの対応など、介護について準備していないタイミングでも問題が出てくることがあります。
介護を行うケースは個々のケースによって対応策や期間もさまざまです。
介護者は働き盛りの方が多く、仕事の上でも中心的な役割を担っていることも多いです。
継続的に介護を行うために、サービスの利用や生活を支援するためにも経済的な負担が発生します。
制度を活用して、仕事を続けながら介護を行う方法を考えていきましょう。
介護についての相談は病院の退院支援窓口や介護が必要な家族が住む市区町村の地域包括支援センターへ相談など体制が整っています。
また、介護との両立について、社内で利用できる制度についての相談や、国の制度について都道府県労働局雇用環境・均等部(室)の相談も利用ができます。
育児と同様、介護でも利用できる制度を知っておくこと、「家のことは仕事に関係がない」とは思わず周囲へ状況をオープンにすることも、介護との両立の理解を得るためには重要なポイントです。
また、人事担当者は育児と同様、新しい制度の理解を行い、自社内で運用の検討や就業規則などの見直しを行いましょう。
従業員からの相談対応や、柔軟な働き方を実現するための規則を検討することが求められ、「仕事と介護の両立」に寛容な風土づくりのための研修も効果的です。
制度の整備や介護休業を取得する社員のサポートなど、育児・介護の両立を実現する体制づくり等でお悩みの企業に専門家が無料でアドバイスを行う厚生労働省の事業もあります。
無料セミナーや他社事例も豊富に紹介されていますので、参考にしてください。
次に、管理職の方は、いつ誰が介護の状況になっても支障がないよう、通常時から体制を整えておくことが必要です。
具体的には業務の棚卸をし、属人化を解消することや業務の可視化をすることです。育児よりも介護は会社やチームでの対応例が少ないかもしれません。
ただ、上司が介護について相談を受けた時は丁寧に相談し、今後の働き方などの確認を行います。
介護についても「お互いさま」の気持ちでチームの雰囲気づくりを進めていきましょう。
まとめ
育児・介護休業法の改正は、企業にとってはさらに従業員が働きやすい環境になるような取り組みが必要です。
今回の改正は介護離職の防止が目的です。
従業員が仕事を続けてもらうためにはどうすればいいか、改正内容をしっかりと理解し、「自分の企業なら、チームなら、自分なら」と対応を今一度考えましょう。
<参考>
厚生労働省「育児・介護休業法について」