2024年10月10日に厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」から「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ案」が公表されてから、数ヶ月経過しました。
50人未満のストレスチェック義務化について検討されている途中ではありますが、ドクタートラストへ「50人未満ですがストレスチェックを実施したいです」と新規のお問い合わせをいただく件数が月ごとに増えている状況です。
なかには、既に50人未満の実施が義務化になったと思われていて「ニュースを見て焦って問い合わせをしました」とお話しされる企業さまや、「いつ義務化になっても大丈夫なように早めに問い合わせをしました」とお話しされる企業さまもいらっしゃいました。
今回は、現状50人未満のストレスチェック義務化の検討がどこまで進んでいるのか1月17日の「今後の労働安全衛生対策について(報告)(案)」(以下、報告書)をもとに見ていきたいと思います。
職場のメンタルヘルス対策の現状
そもそも、ストレスチェック制度は事業場におけるメンタルヘルス対策として、メンタルヘルス不調に対する一次予防の強化などの観点から2015年12月に導入されました。
2023年労働安全衛生調査によると、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合は、労働者数50人以上の事業場で91.3%となっているものの、50人未満の事業場においては、30~49人の事業場で 71.8%、10人~29 人の事業場で56.6%といまだ低い水準となっています。
ストレスチェック制度は医師による面接指導の実施があるため、労働者からも評価されており、結果を分析し職場環境改善につなげることで労働者の心理的ストレス反応に改善がみられるなど一定の成果をあげています。
ストレスチェックや医師の面接指導の実施により労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことは事業場の規模に関わらず重要です。
職場のメンタルヘルス対策を推進するには
ストレスチェック制度が始まった当初は、労働者のプライバシー保護などの懸念により、50人未満の事業場は当分の間、努力義務とされていました。
ただ、現時点では外部機関の活用が広がってきたことで、プライバシー保護の環境は一定程度整備されています。
こうした状況を踏まえ、50人未満の小規模事業場を含めたすべての事業場でメンタルヘルス対策を推進するにあたり、以下の2点の対応を行うことが適当とされています。
① ストレスチェックの実施及び高ストレス者に対する面接指導の実施
② 集団分析の実施及び職場環境の改善
報告書の中に「労働者数50人未満の事業場においてはストレスチェックの実施が当分の間努力義務となっているところ、事業場規模にかかわらずストレスチェックの実施を義務とすることが適当である」と明記されています。
50人未満のストレスチェックについて
「事業場規模にかかわらずストレスチェックの実施を義務とすることが適当である」と明記されているものの、実施体制や集団分析の実施、職場環境の改善など、どこまで対応を行うのか、また、何に気を付けなければならないのでしょうか。
小規模事業場におけるストレスチェック義務化に向けた対応として、大きく下記5点が挙げられています。
① 労働者のプライバシー保護の観点から、原則として、外部委託を推奨する
② 労働基準監督署への報告義務は負担軽減の観点から課さない
③ 負担などに配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する
④ ストレスチェック実施後の集団分析・職場環境改善の義務化については引き続きの検討課題とする
⑤ 集団分析の実施方法については、個人を特定できない方法で実施する努力義務規定とする
また、国が行うべきものとしては大きく下記2点が挙げられています。
① 50人未満の事業場に即したマニュアルの整備
② 高ストレス者の面接指導に無料で対応している地域産業保健センターの体制整備など、十分な支援策を講じるべきである
検討すべき内容や整備すべき内容はまだまだあるかと思いますが、50人未満のストレスチェックが義務化されれば、国のメンタルヘルス対策の大きな前進になるかと思います。
ストレスチェックを提供しているドクタートラストも最新情報を追っていきたいと思います。
<参考>
・厚生労働省「今後の労働安全衛生対策について(報告)(案)」
・厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」
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