職場環境の良し悪しは、社員のモチベーションや業務効率に大きな影響を与えます。
なかでも、上司や同僚とのコミュニケーションの質が、働きやすさやパフォーマンスに直結することは、多くの人が実感しているのではないでしょうか。
そこで、本記事では「ピグマリオン効果」と「ダブルバインド」という、心理学で登場する2つの概念を活用し、より良い職場環境を作るための方法について考えていきます。
ピグマリオン効果とは
ピグマリオン効果とは、「人は他者からの期待に応えるように成長する」という心理効果です。
たとえば、上司が部下に「君ならきっとできる」と期待をかけると、部下はその期待に応えようと努力し、実際に能力を発揮しやすくなります。
これは教育現場でも広く知られており、教師が生徒に高い期待を寄せると、その生徒の成績が向上する傾向があると言われています。
ピグマリオン効果の活用法
職場でピグマリオン効果を活用するには、日常的にポジティブなフィードバックを行うことが大切です。
たとえば、「君の〇〇のようなアイデアはいつも助かっているよ」や「次のプロジェクトでも君の○○の力に期待している」といった声掛けによって、部下の自信を高めることができます。
また、個々の強みに注目して、それを引き出すような期待をかけることで、チーム全体のモチベーション向上が可能です。
ポイントとしては、「頑張れ」や「期待している」だけではなく、「〇〇のスキルがあるから、この業務に向いていると思う」といった具体的な言葉をかけることで、部下は自分の強みを意識しやすくなるでしょう。
また、部下の小さな成功についてフィードバックを積み重ねいくのも、皆さんの期待が部下に伝わりやすくなる方法として有効です。
ダブルバインドとは
ダブルバインドとは、矛盾するメッセージを同時に受け取ること、そしてその状況から逃れられない状態を指します。
ダブルバインドの状態が繰り返されると、メッセージの受け手はどのように行動すればよいのか分からなくなり、ストレスを感じてしまいます。
職場では、上司や部下といった上下関係の中で生じやすく、上司の発言や態度が意図せずダブルバインドを生み出し、部下のモチベーションやパフォーマンスの低下を引き起こしてしまうことも少なくないでしょう。
ダブルバインドを回避するには
ポイントとしては、自分の発言や態度に矛盾が生じていないかを振り返ることが大切です。
たとえば、会議などで「自由にアイデアを出してみて」と部下に伝えたにもかかわらず、部下のアイデアを強く否定してしまったりはしていませんか?
また、言葉だけではなく、話を聞くときに不機嫌な表情や肘をついて話を聞いたりしているなど、非言語的な情報がダブルバインドの発生源となっているかもしれません。
普段から安心したやりとりができるように、心理的安全性の確保を心掛けることも大切ですね!
まとめ
ここまで2つの心理学の概念についてお伝えしていきました。
どちらもシンプルではありますが、コミュニケーションの質を見直すときには大切なポイントです。
もちろん職場環境は複数の要因が絡み合っているため、本記事で紹介した方法だけを意識すれば職場環境全体が良くなるとは限りません。
ですが、小さな声掛けや態度の変化が、大きな成果を生む可能性もあります。
できることからでいいので、本記事がコミュニケーションを振り返るきっかけとなれば幸いです。
<参考>
・日本家族研究・家族療法学会編『家族療法テキストブック』(金剛出版、2013/7/1)
・田中正人著、斎藤勇監修『図解 心理学用語大全:人物と用語でたどる心の学問』(誠文堂新光社、2020/5/11)
