人事担当者にとって、新入社員をどのように育てていくかと同じくらい、「メンタルヘルス不調の予防」は大きなお悩みのひとつではないかと思います。
そこで本記事では、そもそも新入社員がストレスを感じる原因は何か、気を付けるべきストレス兆候、予防対策についてご紹介いたします。
新入社員はどんなところにストレスを感じる?
新入社員がストレスを感じる理由は様々ですが、その中でも特にありがちな3つの理由について見ていきましょう。
慣れない環境
学生から社会人になると、周囲の環境が大きく変化します。
新入社員は慣れない環境で仕事を行うため、ストレスがかかりやすく、疲れを感じやすい状況と言えるでしょう。
そんな疲れを癒すためには、仕事終わりに自宅でゆっくり過ごしたり、休日に友達と遊びに行ったりするなど、身体や心のバランスを取りながらのリフレッシュが必要です。
しかし、就職を機に一人暮らしを始めた新入社員は、親しい人や頼れる人が近くにいない寂しさや孤独感から、仕事終わりや休日にリフレッシュするどころか、さらにストレスを溜め込んでしまう危険性があります。
職場の人間関係
慣れないうちは、上司や先輩に話しかけるのをためらってしまう場面も多いですよね。
加えて、コロナ禍の影響でリモートワークを採用している企業では、対面よりもさらにコミュニケーションが取り辛くなっている状況です。
厚生労働省の「令和2年度新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況」によれば、新卒入社から3年以内に退職した男女ともに、「人間関係が良くなかったため」という退職理由が上位にランクインしており、職場の人間関係が新入社員にとって大きなストレス要因となっている事実がわかります。
わからないことだらけ
当たり前ですが、新入社員は何をするにもわからないことだらけです。
忙しそうな上司や先輩に質問や確認をするのは、新入社員にとってかなり勇気が必要な行動でしょう。
また、関係性構築の初期段階では、「こんなことを聞いたら、無知だと思われるんじゃないか」「無能だと思われて信用がなくなってしまうかも」「邪魔だと言われるかも」といった不安を感じやすく、こうした状況もストレス要因のひとつになります。
ストレスを抱えた新入社員に現れる症状
上記のようなストレスを抱えた新入社員には、身体や心に様々な反応が起こります。
その中でも、よくあらわれる3つの兆候について見ていきましょう。
元気がなくなる・疲労感が見られる
入社時は元気ではつらつとしていた新入社員が、どんよりとした雰囲気で疲れている様子を見せ始めるのは、疲労蓄積の初期段階です。
しかし、これまでお伝えしてきたとおり、そもそも新入社員はストレスを感じやすい状況にあるため、ある程度の疲労が溜まるのは当然と言えます。とはいえ、その疲労に適切な対処がなされなければ、回復にかかる時間がどんどん長くなり、やがて心身の不調へとつながってしまう原因となるでしょう。
食欲不振・睡眠不足
メンタルヘルス不調の兆候として、食欲不振や睡眠不足は代表的な症状です。
疲労の回復には食事と睡眠が必須ですが、メンタルヘルス不調によって必要な栄養と休息が十分に取れないと、さらに疲労が蓄積し、心身の不調が深刻化していきます。
遅刻や欠勤が増える
疲労が十分に回復できない状態が続くと、当然日常生活にも影響を及ぼします。
たとえば、ストレスからくる睡眠不足で疲労回復できず、朝起きにくくなり、結果として遅刻や欠勤の頻度が増えてくるのも、メンタルヘルス不調の兆候のひとつです。
企業が新入社員向けに行うべきメンタルヘルス対策
上記のような新入社員のメンタルヘルス不調を防ぐためには、どうすれば良いのでしょうか。
会社として取り組み可能な3つの対策について見ていきましょう。
ストレスマネジメント研修を実施する
まずはストレスを感じた時、自分自身である程度そのストレスに対処できるような知識を身につけておくのが大事です。
そのためにはセルフケアやレジリエンス、アンガーマネジメントなど、ストレスマネジメントに役立つ研修が有効でしょう。
特にセルフケアの研修では、疲労回復の柱になる食事と睡眠について、疲労回復にはどんな食べ物が良いのか、質の良い睡眠をとるためにはどうすべきかなど、新入社員自身が日常の中で実践可能な知識を盛り込むことが重要です。
相談窓口を設置する
自分ひとりでの対処が難しいときには、周囲の人への相談もストレス緩衝には有効です。
しかし、新入社員には相談できる相手がいなかったり、ストレスの原因が業務内容であったりする場合など、相談しづらい状況が考えられます。
社内相談窓口以外にも、社外に相談窓口を設ける配慮が必要です。
フィジカルやメンタルについての専門知識を持っている者が対応をしてくれる外部相談窓口を選ぶことで、利用への安心感にもつながるでしょう。
ストレスチェックを実施する
ストレスチェックには、受検者が自身のストレスを理解し、セルフケアに役立てもらう目的があります。
また、企業側も組織のストレス状況を把握できるので、職場環境改善の大きな助けになります。
そのため、新入社員にストレスチェックを受けてもらい、自身のストレス状況にあったセルフケアを行ってもらいつつ、企業としては集団分析結果から働きやすい環境作りを進めるという、二段構えの予防対策が打てます。なお、ストレスチェックは全社員が対象となりますので、新入社員のみならず他従業員のストレス状態や会社全体としての課題を見つける一助にもなるでしょう。
新入社員がメンタル不調にならないために企業ができること
メンタルヘルス対策は企業として必ず行うべきですが、それ以外にも新入社員に対してできることがあります。
ここでは、新入社員がメンタル不調にならないために、普段から意識すべきことを紹介します。
叱責、抑圧、否定などをしない
会社に慣れていない新入社員に対しての叱責や抑圧、否定はメンタル不調の大きな要因となります。
特に、現代では学校でも大声で叱責されることも珍しくなってきており、「怒られる」という行為に慣れていない社員がほとんどです。
こうした社員に対して叱責をしても、本当に伝えたいことは伝えられず、ただ「怒られた」という結果だけが残ってしまいメンタル不調を招きます。
「私たちの時代は……」と考えるのではなく、今の時代や人材に合った効果的な伝えかたを考えていく必要があるでしょう。
また、大声でなくても執拗に「なぜ?」を問う行為も危険です。
単純に失敗の原因を聞きたいと思っていても、「なぜ?」という言葉には否定の響きがあるため、相手は精神的な圧力を感じてしまうでしょう。
自分が相手を抑圧していないか、相手は圧力を感じていないかを繊細に感じ取っていくことが求められます。
普段から密なコミュニケーションをとる
新人社員は大きな不安を抱えて入社してきています。
しっかりとコミュニケーションをとることで、不安を軽減することができるでしょう。
「コミュニケーション」と言葉にすると難しく聞こえるかもしれませんが、普段の挨拶やたわいもない雑談で構わないので、毎日コミュニケーションをとることが重要です。
こうした普段のコミュニケーションの積み重ねが信頼関係となり、「相談」に対するハードルを下げることができます。
また、普段から密なコミュニケーションがとれていれば、些細な変化を敏感に察知できるでしょう。
注意点として、相手が嫌がるコミュニケーションは避けましょう。
急に飲みに誘ったり、毎日昼食に誘ったり、頼んでもないのに仕事中にアドバイスを長々喋ったりする行為は逆に信頼関係を破壊します。
いきなり深い関係を築こうとしてはいけません。
まずは挨拶や軽い雑談から始めていきましょう。
場合によっては部署異動も検討
どれだけ新入社員のメンタルヘルスに注視していても、防ぎようがないメンタル不調もあります。
そもそも仕事が合っていない場合やどうしても職場に合わない同僚や上司がいる場合、部署移動も検討すべきでしょう。
新入社員はまだ慣れていないので、多少仕事が辛くても「こういうものだ」と我慢してしまいがちです。
もちろんどんな仕事でも我慢は必要です。
しかし、行き過ぎた我慢はメンタル不調を招くため、上司や管理職が的確に状態を把握して部署移動を検討すべきタイミングを計る必要があります。
まとめ
少子超高齢化社会が進む我が国にとって、若手社員は会社を支える大事な存在です。
そんな若手社員に健康でいきいきと働いてもらうために、メンタルヘルス対策は必須と言えます。ぜひ本記事を参考に、皆様の会社でできることから始めてみましょう。
<参考>
厚生労働省「令和2年度新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況」