はじめに
ドクタートラストでは、全受検者のストレスチェック結果をもとに、毎年ビッグデータを作成しています。
今回は、2021年度にドクタートラストのストレスチェックを受検した342,642名の集計結果と、過去のデータを比較しながら、以下の3点について解説していきます。
① 受検率
② 業種別高ストレス者率
③ 42尺度から見るストレス要因の変化
年度 | 有効受検者数 | 組織数 | 受検率 | 高ストレス者率 |
2021 | 324,642人 | 940組織 | 90.50% | 15.00% |
2020 | 240,275人 | 685組織 | 90.50% | 14.10% |
2019 | 199,290人 | 575組織 | 88.30% | 15.40% |
2割以上の組織が受検率100%を達成している!
受検率は2020年度の90.47%から90.51%と微増でした。
義務化当初である2017年度の受検率78.0%と比較すると大幅に増加しており、「ストレスチェックは受けるもの」という認識の定着を感じます。
受検率100%の組織は940社のうち190社で20.2%でした。
こちらも、前年度の16.4%と比較して増加しており、ストレスチェックに対する意識の高さがうかがえる結果となりました。
新型コロナウイルスがストレス要因に!高ストレス者率の業種別傾向
組織単位の高ストレス者率平均は15.0%と前年度より上昇、一昨年の数値に近づき、新型コロナウイルス流行前の状況に逆戻りしたような結果となりました。
職業別に見てみると、製造業と医療・福祉業は2年連続で下位となっています。
また、2021年度は宿泊業・飲食サービス業が4.5ポイントも上昇し、新型コロナウイルスによる客離れや業績悪化、人材流出などの影響を大きく受けた結果となりました。
働く人々のストレス要因はどのように変化した?42尺度前年比較
以下のグラフは、尺度毎の平均点(1.0~4.0点)をあらわしており、数値が高いほうが不良、低いほうが良好を示しています。
42尺度の平均点を前年度と比較し、変化の大きかった尺度TOP5はこちらです。
順位 | 尺度 | 2020年度 | 2021年度 | 点差 |
1位 | 疲労感 | 2.2 | 2.25 | +0.05(悪化) |
2位 | 安定報酬 | 2.04 | 1.99 | -0.05(改善) |
3位 | 身体的負担感 | 1.99 | 2.04 | +0.05(悪化) |
4位 | ワークセルフバランス | 2.13 | 2.17 | +0.04(悪化) |
5位 | キャリア形成 | 2.75 | 2.71 | -0.04(改善) |
最も差が大きかった尺度は「疲労感」でした。
疲労感の尺度には3つの設問があります
・ ひどく疲れた
・ だるい
・ へとへとだ
2021年度はいずれの設問も悪化しており、新型コロナウイルスによる行動制限や生活環境の変化、人間関係の希薄化などにより疲労感をうまく解消できない状況が浮き彫りとなりました。
2位の「安定報酬」は改善がみられました。
株式会社帝国データバンクによると、2021年度は国内景気の4か月連続改善や有効求人倍率の緩やかな上昇が起こっており、新型コロナウイルスで落ち込んだ景気の回復が、尺度の改善に影響したと考えられます。
また、人手不足に悩む企業が多く、退職防止や人材確保に取り組む企業の増加も改善の一助となっています。
3位の「身体的負担度」は、3年連続で悪化し続けています。
特に悪化したのは製造業で、テレワークの導入が難しいことに加え、生産量に対して人員が追い付かないなどの状況が考えられます。
また、医療・福祉業や保育業界においても、感染防止対策のフローが増えたことや、新型コロナウイルスによる欠員が一人ひとりの負担増につながり、尺度の悪化を招きました。
おわりに
みなさんの職場ではどのような変化が見られましたか?
ビッグデータから読み取れる情報を参考にしながら、ご自身の職場や部署ではどのような傾向があるのか、またその変化に注目してみましょう。
ストレスチェックの設問は80問ありますので、特定の尺度の良し悪しだけでなく、さまざまな角度からの結果分析が可能です。
例えば、「高ストレス者率は低いけれど、健康リスクは高い低い」場合もありますし、その逆もありえます。
こうした分析を職場環境改善につなげていくことが重要です。
しかし、「集団分析をどのように活用すればよいかわからない」というお悩みをよく伺います。
集団分析を職場環境改善に活かすには、まずは職場のトップがメリットを理解し、「職場環境を改善していこう」と意志を持ち、職場全体に周知しなくてはいけません。
組織単位であれば経営者が、部署単位であれば部門長が号令をかけましょう。
職場環境が勝手に改善する「魔法の杖」は残念ながらありません。
集団分析にきちんと向き合う時間を作り、従業員の声に耳を傾けましょう。
「自分たちの職場がどのような状態なのか」「従業員はいきいきと健康に働けているのか」を考え、自社の状態を振り返る行為こそが、「集団分析を活用する」ことなのではないかと感じます。
<参考>
・ 株式会社帝国データバンク「TDB景気動向調査(全国)(PDF)」
・ 株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2022年1月)(PDF)」