経済的にも技術的にも高度に発展した現在、私たちは便利で快適な生活を享受できている一方、「ストレス社会」という大きな課題を抱えています。
SNSをはじめとした情報化によるストレスや、新型コロナウイルス感染症の蔓延による日常生活の変化、リモートワークの普及による労働環境の変化や雇用状況の悪化によるストレスなど、私たちは日々、さまざまなストレスを受けて生活をしています。
このような状況下で、メンタルヘルス不調者も年々増加しており、会社を休職・退職する社員も少なくありません。
この記事では、現代を生き抜くために必要な企業のメンタルヘルス対策についてお伝えします。
ストレス社会とは
現代は、社会問題としてストレスが顕在化した「ストレス社会」です。
厚生労働省の令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 54.2%と半数以上を占めています。
また、ストレスの内容(主な3つを回答)をみると、「仕事の量」が 42.5%と最も多く、「仕事の失敗、責任の発生等」35.0%、「仕事の質」30.9%と続きます。
私たちが競争社会の中で何らかのストレスを抱えていることがわかります。
ストレスの原因について
ストレスの原因は大きく分けて「急性」と「持続性」の2種類に分かれます。
急性のストレス原因としてあげられるのが失恋や失職など、予期せず突発的に起こる出来事であり、逆に持続性のストレス原因は仕事の不満や上司との不和、病気など継続して頭を悩ませることになる出来事です。
主なストレス原因については下記を参照してください。
出所:ストレスとは?原因や簡単にできるストレスチェックのやり方 | NHK健康チャンネル
ストレス社会の現状
こしたしたストレス社会では、メンタルヘルス不調者も増加傾向にあります。
前出の令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は9.2%で、平成30年に実施した同調査の10.3%より減少しているものの、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は7.8%(平成30年調査では6.7%)、退職した労働者がいた事業所の割合は3.7%(平成30年調査では5.8%)でした。
また、以下に示した、厚生労働省の患者調査では、神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害、気分(感情障害)の患者数が増加している現実があります。
ストレス社会が引き起こすストレス症状とは
過度なストレスを受けると、自律神経が崩れてさまざまストレス症状を引き起こします。
主に社会で受けるストレスによって引き起こされるストレス症状には以下のものがあります。
・気分の落ち込み
・怒りっぽくなる
・疲れやすい
・肩こりやめまい
・不眠
・思考力が低下
・暴飲暴食に走る
・人と会うのを避ける
・動悸や発汗
こうしたストレス症状を放置すると、うつや不安障害といった重大な精神疾患につながります。
うつなどの精神疾患は完治が難しいため、上記のストレス症状が見られたらすぐにストレス原因から離れるなどの対応を行いましょう。
また、事業者も管理監督者に対して、部下のストレス症状を見逃さないように指導していく必要があります。
新型コロナウイルス感染症によるストレス社会の変化
さらに、現在の大きなストレスが新型コロナウイルス感染症です。
新型コロナウイルス感染症は、先行きの見えない不安、感染への恐怖、孤独などの心の不調、そして、外出の自粛などによる生活習慣の乱れや自律神経失調症など体の不調をもたらしています。
特に労働者は、テレワークの導入によって、「通勤時間を節約できる」「隙間時間などを有効活用できる」といったメリットを感じている一方で、「同僚や部下とのコミュニケーションがとりにくい」、「上司とのコミュニケーションがとりにくい」「OA機器がそろっていない」などのストレスを感じている方も少なくありません。
NTTデータ経営研究所などの調査によると、新型コロナウイルス感染症の拡大以降にストレスや悩みが増加した人は6割に上るとしています。
つまり、このような状況下で、社員の健康を守るメンタルヘルス対策は喫緊の課題です。
ストレス社会を生き抜くために!企業が取り組むべきメンタルヘルス対策
では、企業はストレス社会においてどんなメンタルヘルス対策に取り組めば良いでしょうか?
今すぐ取り組めるメンタルヘルス対策は4つあります。
産業医の選任
まずは、産業医の選任と活用から行いましょう。
産業医は50名以上の事業場で選任が義務づけられていますが、みなさんの事業場での選任はされているでしょうか。
「産業医は選任していても衛生委員会への参加だけ……」という事業場も中にはあるかもしれません。
産業医の職務には、メンタルヘルスケアも含まれます。
メンタルヘルス不調の社員が発生した場合には産業医から医学的アドバイスをもらい、会社として迅速に対応できるよう、また、予防の観点からも産業医の選任と活用を進めましょう。
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相談窓口の設置
次に、相談窓口の設置です。
2022年4月施行のパワハラ防止法により、すべての企業に対して相談窓口の設置が義務化されましたが、みなさんの企業には、相談窓口はありますか?
また、その存在は従業員に浸透しているでしょうか。
ハラスメントだけでなく、社員が心身の健康について相談できる場所を設置することが、社員の不調にいち早く気付き、休職や退職を防ぐためにも必須といえます。
また、相談窓口を社内だけではなく、外部に設置することで、社員が利用しやすくなる、プライバシーが確保できる、専門的な知識を得ることができるというメリットもありますので、メリット、デメリットを比較して、相談窓口の設置を進めましょう。
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ストレスチェックの実施
ストレスチェックはされていますか?
ストレスチェックは個々人がストレス状況を把握するだけではなく、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること(一次予防)を主な目的としたものです。
つまり、職場の環境や社員のストレスの要因が把握できるものですので、活用しない手はありません。
ストレスチェックを実施して終わりではなく、結果を分析して職場環境に取り組めるような、ストレスチェックを実施することが大切です。
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ストレスマネジメント研修の実施
ストレスチェックと合わせて行っていただきたいのが、ストレスマネジメントの研修です。
ストレスの要因やそれに対する反応は、その方の経験や価値観、年齢や性別などによってさまざまで、対処法も異なります。
そのため、「自分にとってのストレスの要因」を理解し、ストレスへの対処法を身に着けることが大切です。
ストレスチェック後に、職場環境を整えることも重要ですが、社員一人ひとりが、ストレスに対しマネジメントを行えるサポートも行いましょう。
まとめ
今回は、企業として行うべきメンタルヘルス対策4つをお伝えしました。
ドクタートラストは、ストレスチェックの集団分析結果をもとにした職場環境改善サービスや人材育成・組織開発コンサルティングサービス「STELLA」を提供しているほか、ご要望に沿った各種セミナーも実施しています。
ストレスチェックを活用したメンタルヘルス対策に取り組む際は、お気軽にお問い合わせください。
<参考>
・ 厚生労働省「患者調査」各年版
・ 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「令和2年度テレワークの労務管理等に関する実態調査【概要版】令和3年3月(PDF)」
・ 株式会社NTTデータ経営研究所「働く人のメンタルヘルスとサービス・ギャップの実態調査」