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ストレスチェック57項目・80項目・86項目の違いとは?

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変化の大きな現代社会で働く労働者は、さまざまなストレスにさらされています。
職場や日常生活でのプレッシャー、人間関係の葛藤、生活環境の変化など、課題は多岐にわたります。
そのなかでも、就業環境におけるストレス状況を把握することで労働者自身のセルフケアのきっかけとし、会社や部署としてもいきいきとはたらき続けられる環境を整える参考とするために実施されるのが、ストレスチェックです。
今回は受検設問数が複数用意されているストレスチェックのうち、「どれを受検すればいいのか」、「具体的にはどう違うのか」を確認していきます。

ストレスチェック項目における3領域とは

ストレスチェックは、私たちがはたらくうえでの心理的なストレスに関する項目を評価するための有用なツールの一つです。
その評価項目は、大きく以下の3つの領域に分けられます。

① 職場環境・仕事の負担に関する領域

この領域では、私たちがはたらく職場環境や仕事の負担に関する要素が評価されます。
労働時間、物理的な就業環境、80項目では労働条件、役割や責任、組織のサポートなども含まれます。
たとえば、長時間労働や過重な業務負荷は、私たちにとって過度なストレスの要因となり得ます。
この領域では、職場の改善や効果的なタスク管理などを検討する重要な参考となります。

② ストレス反応に関する領域

この領域では、本来可視化することのできない私たち個人のストレス反応に関連する要素が評価されます。
ストレスに対する個人の感覚受容性やストレス耐性には個人差があります。
まずは最も大切な「気づき」を得て自身の状況を受け入れセルフケアやストレスマネジメントをするためにも重要な要素です。

③ 周囲の対人支援に関する領域

この領域では、私たちの職場や周囲の人々からの支援やコミュニケーションの質が評価されます。
対人関係はともすればストレスの要因にもなり得ますが、良好な対人関係や適切なサポートは、ストレス解消や心の健康に大きな影響を与えるためはたらく上でも非常に重要な要素です。

ストレスチェックによってこれらの領域を評価することで、私たちはストレスの原因や影響を把握し、より具体的な改善策を見つけるきっかけとすることができます。

57項目版・80項目版・86項目版の違いや特徴とは?

ストレスチェックは、項目数によって評価の範囲と詳細度が異なります。
ここでは、厚生労働のホームページも参考に、ストレスチェックの57項目版、80項目版、そして独自に6項目を追加したドクタートラストの提供する86項目版の違いや特徴について解説します。

57項目版について

57項目版は、主に職場環境やストレス反応、周囲からの対人支援状況に項目で構成されています。
57項目版は、最も基本的なストレス状況と職場環境や対人支援の状況について最低限をカバーしているため、比較的おおまかな要因把握をすることができます。

80項目版について

80項目版は、57項目版に加えて職場環境に関する項目が追加されています。
これにより、より詳しい職場環境の評価が可能となります。
たとえば、職場においての対人支援状況に不良が見られる場合に、「そもそもの機会が不足しているのか?」「業務上のコミュニケーションに不足があるのか?」など、不良要因の方向性を把握するための参考にすることが可能です。
80項目版は、職場環境によるストレスの影響をより具体的に捉え、改善策を見つけるために有用です。

86項目版について

ドクタートラストでは、80項目版にさらに生活習慣に関する質問項目6項目を追加した86項目版を提供しています。
追加された質問項目は、「睡眠習慣」、「飲酒習慣」、「喫煙習慣」、「身体について」、「労働者自身の自覚する生産性について」に関する6項目です。
これにより、生活習慣の影響や労働者の生産性に関連する要素も合わせて評価できます。
86項目版は、ストレスケアの観点でも重要な要素であるセルフケアのきっかけにもしやすく、ストレスチェック実施後に、より総合的な具体的データ活用や対策を行いたい場合に役立ちます。

おすすめのストレスチェック項目数は?

ストレスチェックの項目数は、会社の状況、業務状況や個人の状況、そもそもの実施目的によって最適解は異なりますが、86 項目版が負担を抑えて最も詳細な評価を提供できるため、おすすめです。
ただ、現在57項目版で受検実施をしているのであれば、年一度以上実施義務のあるストレスチェックをコストにしてしまうことなく、投資として活用するために、まずは最低でも80項目版での実施を検討しましょう。

57項目版は、たしかに項目数が少ないため最も受検負担が低いように感じられますが、残念ながら集団分析結果で確認することのできる要素が少なく、実際に職場環境改善を検討するための参考とする際に要因分析や課題抽出が難しいという問題があります。
また、ストレスチェックが義務化されてから現在までの間に多くの会社や官公庁でも80項目版の受検に切り替えていることからもわかるように、実際には23項目の増加は受検者にとってそこまで大きな負担増にはなっていないようです。

そのうえで、わずか6項目の増加ですが、職場環境、ストレス反応、身体的・心理的な症状に加えて、生活習慣に関する質問項目も含まれ、ストレスの多角的な要素を総合的に評価することができ、生活習慣がストレスに与える影響や労働者の生産性についても理解できるために、健康診断結果などとあわせてより複合的に具体的な考え方や改善策の導き出しが可能な86項目版受検で、職場環境改善や労働者のセルフケア啓発に取り組んでみてはいかがでしょうか。

ストレスチェック実施後の職場環境改善への活かし方

ストレスチェックは、通常では把握の難しい職場環境の状況についてとストレス状況を把握するためのツールです。
では、ストレスチェック実施後に得られた集団分析結果を職場環境改善に活かす方法を考えてみましょう。

まず、ストレスチェックの結果を分析しましょう。
結果を眺めて確認して終わりではなく、どの領域に課題が見られるのか、業務内容に起因するような特定要素によるものなのか、不良傾向は想定できることか否かなど、課題の選別を行い、想定外の仮題については「なぜ?」をくり返し真因を把握しましょう。
抽出した課題には順位を付け、優先的に改善すべきポイントを特定します。

次に、改善策を考えます。
職場環境の改善には、労働時間の見直しや休暇制度の充実、労働条件の改善なども含まれますが、不良傾向が見られ不満がある様子があるからといってすべてに対応することは現実的ではありません。
あくまでも会社として合理的に対応することが可能な範囲で、目的を持って施策を検討しましょう。
ストレス反応に関しては、ストレスマネジメントプログラムの導入やセルフケアについてのリテラシー向上のための情報提供など、課題が見えれば会社としてできることは明確になります。

改善策を実施する際には、組織のトップやマネージャーのリーダーシップが重要です。ストレスチェックの結果は会社や部署の成績表や評価ではありません。
受検実施のタイミングの労働者の状況を表す一象限です。
真摯に結果を受け止め、可能な範囲で労働者にもフィードバックし、必要なサポートやリソースを提供することが重要ですので、会社として大切な業務の一つとして労働者に認識させることが大切です。

そのうえで、取り組む改善策の決定にあたって労働者からの意見聴取を行い、取り組み過程で労働者からのフィードバックを収集することで、コミュニケーション機会の創出や、職場環境改善の取り組みに対する労働者の主体性を醸成することでワーク・エンゲージメントの向上効果も期待されます。

ストレスチェックの結果を職場環境改善に活かすことで、労働者のストレス軽減や心の健康促進、生産性向上など、ポジティブな影響をもたらすことができます。
今後ますます進む労働人口が減少する中で、会社を継続的に発展させるためにも労働者がいきいきとはたらき続けやすい就業環境を、会社と労働者が一緒に創り上げるきっかけの一つとして、ストレスチェックを有効に活用しましょう。

ABOUT ME
【シニアコンサルタント】唐澤 崇
【保有資格】産業保健法務主任者/メンタルヘルス法務主任者/上級ハラスメントマネージャー/ハラスメントカウンセラー/健康経営アドバイザー 【コメント】人生の中での多くの時間を過ごす「職場」という環境において、「健康にいきいきと働き続ける」そんな当たり前の幸せを実現するお手伝いとして、企業へのコンサルティングだけでなく、実際に現場で働く従業員のみなさんとワークショップや研修、カウンセリングなどを通じてかかわりお手伝いをしています。