常時雇用する従業員が50名以上いる事業場で1年に1回の実施が義務付けられているストレスチェック。
本記事ではこのストレスチェックの受検方法や流れについて、ご説明します。
ストレスチェックの目的
ストレスチェックには、受検者と事業者それぞれに目的があります。
まず受検者の目的は、ストレスチェックの個人結果から自身のストレス状態を把握し、セルフケアに役立てること。
そして事業者の目的は、集団分析結果から集団ごとの傾向を把握し、職場環境改善に役立てることです。
ちなみに2023年3月6日に東京労働局が発表した「メンタルヘルス対策自主点検」の実施結果によると、有効回答した1,800事業場のうち、76.3%が集団分析結果を勘案して心理的負担軽減措置を講じていると回答しています。
ストレスチェックは実施が義務化されてから8年目になりますが、徐々に結果を活用する事業者が増えてきているようです。
ストレスチェック実施の流れ
それでは続いて、実際のストレスチェック実施の流れをご説明します。
受検方法
ストレスチェックにはいくつかの受検方法がありますが、主に選ばれているものはマークシート受検、もしくはWEB受検です。
マークシート受検は、WEB環境が整っていない企業でも、誰でも受検が可能です。
一方のWEB受検はパソコンやスマホなどWEB環境があればいつでもどこでも手軽に受検が可能です。
事業場の状況に合わせて、どちらかを選んだり、併用したりするのも一つの手でしょう。
受検勧奨
受検期間の半ば頃まで過ぎたら、いったん受検状況を確認し、受検勧奨を行います。
この時、実施事務従事者だけではなく、管理職(部長や課長等)にも協力いただくと、勧奨が隅々まで行き届きやすくなるためおすすめです。
個人結果を受検者に確認してもらう
受検後、受検者には個人結果を確認していただきます。
そしてその結果から現在の自身のストレス状況はどうであるかを把握し、必要に応じてセルフケアに役立てていただきます。
高ストレス者面談の実施
ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された受検者から面談の申し出があった場合には、産業医面談を実施しましょう。
常時雇用する労働者が50名以上いる事業場では産業医の選任義務があるので、選任している産業医に実施してもらうのがおすすめです。
また、産業医選任義務のない事業場の場合は、地域産業保健センターの医療職による産業保健サービスが無料で受けられますので、必要に応じて活用しましょう。
集団分析を経営層や管理職に報告
集団分析が完了したら、事業場全体の傾向を経営層に、加えて各所属別の傾向を管理職に向けて報告します。
結果の内容によっては、必要に応じて職場環境改善に向けたセミナー等の取り組みを進めていくことがおすすめです。
受検率を上げるためのポイント
ストレスチェック後に集団分析を活用して職場環境改善を進めるためには、なるべく多くのデータを取ること、つまり受検率の向上が重要になります。
しかし、何年もストレスチェックを実施していると、中には受検率が低下傾向になってしまう場合があります。
そんな時、受検率向上のために役立つのが、実施目的の再周知をしていただきながら、受検勧奨を行っていただくことです。
たとえば、「集団分析結果から集団ごとの傾向を把握し、強みについては維持もしくは可能であればさらに伸ばせるように、弱みについては取り組めるものとそうではないものに仕分けた上で、取り組めるものの改善策を検討し実行していく。そのために、日頃働く中でどのように感じているか、ストレスチェックを通して把握したいため、ぜひ受検してほしい」ということを会社側から従業員に向けて改めて伝えることがおすすめです。
ストレスチェックを実施し、環境改善に活かそう
今回は、ストレスチェックの受検方法や流れについてご説明しました。
総務省の発表によると、少子高齢化の進行によって、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8,716万人をピークに以降減少しており、2021年には7,450万人、そして2050年には更に5,275万人に減るという推計が出ています。
このように働き手が減り続けていく中で、会社としてどのように生産性を維持、向上していくかは、従業員のプレゼンティーズム(健康問題を抱えつつ仕事を行っている状態)への対策が非常に重要です。
そんな時、従業員のストレス状況が把握できる集団分析はとても参考になりますので、ぜひストレスチェックを実施し、職場環境改善に活かしていただければと思います。
【参考】
・ 東京労働局「メンタルヘルス対策自主点検実施結果について~ストレスチェック結果を集団分析し,その結果を活用した事業場の割合が76.3%に〜(PDF)」
・ こころの耳「地域産業保健センター」
・ 総務省「情報通信白書令和4年版」