研究レポート

姿勢の悪さが及ぼす影響とは?

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幼いころ、食事や勉強する際に姿勢が悪いと注意されたことが誰しも一度はあるのではないでしょうか。
良い姿勢は健康に良いとなんとなく思っていても、日常で意識的に背筋を伸ばしている生活は疲れますし、姿勢が悪いことで起こる影響について理解していないと無意識に身体が楽な姿勢をとってしまうものです。

今回は、姿勢ストレスの関係から私たちの身体への影響について解説していきます。

楽な姿勢=悪い姿勢だった?

身体を動かすと身体に負担がかかります。
たとえば、階段を上り下りすると足に負担がかかりますし、PC作業をする際はキーボードを打つため手に負担がかかります。
これは、筋肉痛を考えてみるとわかりやすいでしょう。

しかし、じつは動かしていなくても身体には負担がかかっているのです。
たとえば、ソファーにもたれてあぐらをかいた場合、膝や足首のゆがみを強め、骨盤が丸まります。
骨盤の歪みや傾きが酷くなると腰痛や肩こり、首の痛みなど、身体の至るところへ悪影響を及ぼします。
ただ、こうした楽な姿勢は一般的に筋力を必要としないため自然ととってしまいがちです。
つまり、悪い姿勢は楽がゆえに長時間同じ姿勢をキープできてしまうため、気がついたときには身体への影響が大きくなってしまうのです。

姿勢が悪いと何が起こる?

さきほど姿勢が悪いと骨盤が傾き、身体に悪影響があるとお伝えしました。
では、姿勢が悪いことでほかにどんな影響があるのでしょうか。
以下は、姿勢の悪さによって考えられる悪影響です。

① 腰痛や肩こりなどの原因になる

姿勢が悪いと一部の筋肉に負荷が集中したり、逆に使われない筋肉は弱くなったりするため、腰痛や肩こりなどの不調を及ぼす可能性があります。

② 太りやすくなる

骨盤や内臓の位置がズレてしまうと身体に大きな負担がかかり、内臓が正常に働かなくなります。
内臓機能が低下すると消化吸収がうまくできなくなり、代謝が悪くなることで太りやすい体質になります。

③ 血流が悪くなる

猫背は、背中を丸めるため呼吸が浅くなります。
呼吸が浅くなると酸素が全体に行き届かないため身体の老廃物が蓄積していき血流が悪くなります。
その結果、冷え症や生理不順、むくみ、吐き気などさまざまな身体の不調を引き起こします。

④ 集中力が低下する

悪い姿勢によって血流が滞ることで、脳へ酸素が十分に行き届かなくなり、脳の活動低下につながります。
脳の活動低下によって、日頃から疲れやすいと感じるようになり、自律神経が乱れて精神的不安も伴うでしょう。
その結果、集中力が低下してしまいます。

⑤ 老けて見える

背中が丸まっている人は実年齢よりも老けて見えてしまいます。
こうした、姿勢による見た目への影響は私生活だけでなく仕事にも関係してくるかもしれません。
人間はコミュニケーションにおいて半数以上の情報を視覚から得ているとされており、いくら言語でのコミュニケーション能力が長けている人でも見た目からの印象は強いものです。
そのため、ビジネスシーンにおいても姿勢が悪いがゆえに相手に与える印象が下がってしまうこともあります。

姿勢の悪さによる特に多い症状とは?

ストレスチェックには身体反応を問う設問がいくつかあります。
ドクタートラストで2021年度実施した32万人の回答では、最も不良の割合が多かったのは「首筋や肩がこる」、ついで「目が疲れる」「腰が痛い」という結果となりました。
下記の図1、2、3から全体の約3割の人が目や肩、腰にかけての不調を感じていることが判明しました。

図1
図2
図3

全体的には不良回答よりも良好回答の割合が高いものの、「首筋や肩がこる」の設問においては、30代の不良回答割合が半数以上であるのが目立ちました。
肩こりや腰痛と聞くとお年寄りに多い症状のイメージがありますが、ストレスチェック結果から年齢に関係なく日常の姿勢や環境、ストレスによって発症していることがわかります。

日本人が最も悩む腰痛のメカニズム

日本人の平均座位時間は世界でもトップクラスの420分(7時間)といわれています。
座りっぱなしは飲酒や喫煙と同じくらい身体へ悪影響を及ぼすと考えられており、多くの日本人が腰痛に悩まされています。
では、多くの日本人が悩みである腰痛はなにが原因で発症するのでしょうか。
図4のように発症原因は大きく分けて3つあります。

図4

① 身体的な腰への負担

重い荷物の持ち上げ、不良姿勢により腰自体に不具合が起こります。
痛みへの過度な保護により片側に重心が傾き症状が悪化するケースも考えられます。

② 心理的なストレス

人間関係、周囲のサポート、痛みへの不安により脳機能に不具合が起こります。

③ 姿勢のバランスの乱れ

心理的ストレスが強まると頭痛・下痢・吐き気・睡眠障害など身体にさまざまな不調をきたします。
また、心理的ストレスを抱えたまま重労働をすると、姿勢バランスが崩れて「ぎっくり腰」が発生するリスクが高まります。

腰痛だからといって必要以上に腰をかばうのは、身体のほかの部分への影響を考えると決して良いとは言えません。
しかし、過度な疲労や心理的ストレスが蓄積していくと症状の重篤化につながるためその場合は適度な休養が必要です。
腰痛について過度に心配せず、普段どおり上手く付き合いながら生活していくことが改善への近道でしょう。

良い姿勢の取りかたとメンタルヘルス軽減

さまざまな病気を予防するためには、ストレスを緩和することも大切ですが、正しい姿勢で過ごすことも非常に重要です。
では、正しい姿勢とはどのようなものなのでしょうか。
着席時の正しい姿勢の基本は以下の2つです。

◎顎を引き、坐骨を座面に当てて背筋を伸ばす
◎骨盤を立てて両足を床につける

また、立っている場合の正しい姿勢のイメージは、背伸びをする姿勢が最も理想的だとされています。
正しい姿勢を取ることで痛みを予防でき、心理的ストレス緩和も期待できるので、良い姿勢を意識しながら適度に日々のケアを行っていきましょう。
最近では姿勢維持をサポートするオフィスチェアや骨盤矯正を目的としたベルトやストレッチ器具などが販売されているのでおススメです。
それでも改善されない場合は、骨盤矯正や整骨院などの専門家を受診しましょう。

まとめ

私たちは日々デスクワークやスマートフォンを使用する際についつい背中が丸くなったり、楽な姿勢をとったりしがちです。
ストレスチェック結果からも肩や腰の痛みがほかの項目と比較して不良傾向にあることがわかっています。
とくに多くの人の悩みである腰痛は、姿勢の問題だけでなく心理的ストレスの要因の一つです。
心理的ストレスを払拭するのは容易ではないため、まずは姿勢を正すことによって痛みの軽減と予防をおススメします。

今回の記事で姿勢の悪さが身心に与える影響がどれだけ大きいかおわかりいただけたかと思います。
これを機に、正しい姿勢への理解を深め、無理のない範囲で取り組んでみてはいかがでしょうか。

【参考文献】
厚生労働省「ストレスと腰痛」

ABOUT ME
【アナリスト】押切 愛里
前職で一緒に働いていた上司や同僚がメンタルヘルスに陥っている状況で私自身「改善する方法はないか」「何かしらサポートしたい」と思い、現在は「職場環境改善に効果的な情報」や「ストレスチェック結果から判明した最新情報」を中心に分析・発信しています。今後も多くの人がいきいきと元気に働ける職場づくりをモットーに役立つ情報をお届けします