2015年12月、ストレスチェック制度の実施が義務付けられました。仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が増加傾向にあった背景を踏まえ、2014年6月に「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律第82号)が公布されました。
<参考資料>
労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)の概要(厚生労働省)
<概要はこちらからもご確認いただけます>
ストレスチェック制度(Wikipedia)
労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的とし、
労働安全衛生法第66条の10に係る事業場における一連の取り組みをいいます。
2015年12月から、労働者が50人以上いる事業場では毎年1回、この検査を全ての働く人に対して実施することが義務づけられました。
目的
ストレスチェック制度は、労働者本人に自らのストレス状況について気付きを促し、個々の労働者のストレスを低減させるとともに、集団分析を活用することで、職場におけるストレス要因を洗い出し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減するよう努めることを目指しています。
また、その中で、ストレスの高い者を早期に発見し、医師による面接指導につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止(一次予防)します。
実施義務
常時 50 人以上の労働者を使用する事業場に実施義務があります。
これは衛生管理者や産業医の選任義務と同様です。
また、「労働者」には、パートタイム労働者や派遣労働者も含まれます。
派遣労働者については、「派遣元」が実施義務を負っている一方で、「派遣先」で集団分析を行うことが望ましいとされています。
そのため「派遣元」と「派遣先」の両方でストレスチェック制度を実施しましょう。
なお、常時50人未満の労働者を使用する事業場での実施は「努力義務」とされていますが、ほかに50名以上の事業場がある場合は、全労働者が受検することをお勧めします。
実施頻度
毎年同じ時期にストレスチェック制度を実施することで経年変化を確認できます。
また、繁忙期よりは閑散期に実施することをお勧めします。
ストレスチェック制度はやって終わりではなく、
実施後は労働基準監督署に報告を行います。
②を満たさない場合(労働時間数が4分の3未満)でも、①を満たし1週間の労働時間数が通常の労働者の所定労働時間数のおおむね 2分の1以上である人はストレスチェックの受検対象者とすることが望ましいとされています。
また、派遣労働者については、派遣元事業者でのストレスチェック実施が義務づけられています。
しかし、集団ごとの集計・分析については、職場単位での実施が重要です。
そのため派遣先事業者は、派遣労働者も含めた一定規模の集団ごとにストレスチェック結果を集計・分析しましょう。
なお、実施時期に休職している労働者は対象者とはならないので、実施しなくても差し支えありません。
<労働安全衛生法>120条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
(中略)
5 第100条第1項又は第3項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
ちなみに一般的な定期健康診断は労働者側にも受診が義務づけられていますが、ストレスチェックの場合は、
受検者側である労働者が受検を拒んだとしても、罰則を科されることはありません。
調査票の選定や評価方法、高ストレス者の選定基準に医学的見地から意見を述べるとともに、面接指導の必要性の判断などを行う実施者となれるのは、法令で定められた医師(産業医)、保健師、精神保健福祉士、歯科医師、看護師、公認心理師に限定されます。
なお医師、保健師以外が実施者になるためには、一定の研修を受ける必要があります。
また、仮にこれらの資格を持っていても、人事部などで人事権がある人は実施者にはなれません。
※ 統計上、受検者総数のうち、0.4%が医師(産業医)の面談を受診しています。
実施者の指示により、ストレスチェック実施の事務(個人の調査票のデータ入力や結果の出力、記録の保存など)を行う実施事務従事者は、実施者のように医師や保健師などの資格を持っている必要ありません。
社内の衛生管理者や産業保健スタッフから選ぶことが一般的です。
もしこういった人がいない場合は、事務職員から選ぶことになります。
ストレスチェックの結果などの個人情報を漏えいした場合、責任は重大であることから、従業員の解雇や昇進、異動などに権限を持つ管理監督者を実施事務従事者に選んではいけません。
なお、個人情報を漏えいした場合、責任は重大であることから、実施事務従事者選びは慎重に行いましょう。
実施者を引き受けられる医師や保健師などが事業場内にいない場合は、ストレスチェック制度の実施を外部機関に委託することになります。
顧問契約している嘱託産業医に委託することも可能ですが、業務の範囲が広く、すべての業務を定例訪問時間内でお願いするのは費用や効率面を鑑みても、必ずしも現実的とはいえません。
大まかな流れは、以下の図の通りです。
ストレスチェックの方針表明や社内周知等の事前準備を行ったうえで、実施事務従事者が質問票・もしくはWebシステムなどを用いて、ストレスチェックを行います。実施後は、本人に速やかに結果の報告をし、「高ストレス」と判定された者が面談指導を希望した場合のみ、医師による面談を行います。また、結果を組織や部署ごとに集計・分析した「集団分析結果」をもとに、職場環境改善も行えると良いでしょう。集団分析および職場環境改善については努力義務とされていますが、メンタルヘルス不調を未然に防げるほか、職場環境改善による生産性向上なども期待できるため、前向きに取り組むのが望ましいです。最後に、ストレスチェックの結果と面接指導の実施状況について、労基監督署へ報告を行います。
ストレスチェックを実施する前に事前準備として以下の3点を行います。
① 事業者による「メンタルヘルス不調の未然防止のためにストレスチェック制度を実施する」旨の方針表明
② 衛生委員会でストレスチェック制度の実施方法などを調査審議
③ ②で決まったことを社内規程として明文化するとともに、労働者に内容を通知
実施者は、高ストレス者であり、医師による面接指導が必要と判定された労働者に対して、産業医面談の受診勧奨を行います。
産業医面談を受けることは義務ではありませんが、なるべく受けてもらうようにしましょう。
事業者は、面接指導を行った医師の意見を参考にして、残業禁止、労働時間の短縮、作業の転換など、就業上の措置を行っていきます。
また、ストレスチェックの結果や、医師による面接指導次第で不利益な取扱いを行うことは厳禁です。
(注1) 統計上、受検者総数のうち、0.4%が医師(産業医)の面談を受診しています。
ストレスチェックの個人結果を部署や年代といった集団ごとに分析した結果を用いて職場におけるストレス要因を評価し、職場環境改善を行います。
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・
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事業者は、1年に1度、ストレスチェックと面接指導実施状況を労働基準監督署に報告しなくてはなりません。
報告書の提出時期は、事業場ごとに設定できます。
報告義務を怠った場合、
労働安全衛生法100条の違反となり、 50万円以下の罰金が科せられます。
なお、労働者数50人未満の事業場は、ストレスチェック制度の実施を義務づけられていないため、報告義務はありません。
報告様式は以下よりDLできます。
厚生労働省
「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」
<ストレスチェック制度に関する法令等はこちらからご覧いただけます>
・ 「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
・ 厚生労働省令第94号「労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(PDF)」
(ストレスチェック制度に関する厚生労働省令)
・ 厚生労働省告示第251号「労働安全衛生規則第52条の10第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める研修(PDF)」
・ 平成30年8月改正「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき業者が講ずべき措置に関する指針(PDF)」(ストレスチェック指針
・ こころの耳「ストレスチェック制度について
受検後は、個人ごとに「受検結果」がかえってきます。
受検結果にはストレスプロフィールなどが掲載されていますが、これは「よい」「悪い」で判断するものではありません。
結果はあくまでその人の受検時の「ストレスの程度」であることに留意しましょう。
「高ストレス」を「ストレスチェックで引っかかった」と受け止める方もいますが否定的にとらえるのではなく、ストレスへの対処(セルフケア)のきかっけとして前向きに活用しましょう。
また、労働者の個別の同意がなければ、事業者側に結果が知られることはありませんし、「高ストレス」だからといって人事上、不利益な扱いを受けることもありません。
ストレスチェック実施後に行う面接指導とは、長時間労働による過労や上司等からのハラスメントによるメンタル不調、脳・心臓疾患を防ぐことを目的とし、受検終了後に高ストレス者と判定された方の中で本人が希望する場合に行う医師面談を指します。
面接指導実施後は結果と一緒に、所定の様式で年に1度、労働基準監督署へ提出します。
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