
公務員はストレスが低い?
最終更新日 2023-01-12
ストレスチェック研究所では2019年度ストレスチェック有効受検者199,290人、575組織のデータをもとに、民間企業(民間)と官公庁(公務)で高ストレス者率の分布を比較を行いました。
その結果、民間と公務で特徴が異なることが明らかになりました。
【考察①】高ストレス者率のピークに差が見られた
民間企業は25~34歳に高ストレス者率のピークが見られました。
発達心理学の観点で考察してみます。
25~34歳は、活力みなぎるポジティブさと、他者との関わりなどに苦悩するネガティブさを拮抗させる時期と考えられています。
仕事そのものに関することがら以外にも課題を持ちやすく、「人に受け入れられているのだろうか」「自分は間違っているのではないだろうか」といった、対人関係上の不安や迷いを抱きながら業務に当たる傾向があるのではないでしょうか。
他世代とくらべると負荷を抱えやすい時期と言えるでしょうから、そのような背景もこの結果の一因となっているかもしれません。
【考察②】公務は45~54歳に高ストレス者率のピークが見られた
働くことの評価が実力主義に変化しているとささやかれて久しいですが、官公庁における役職や給与体系は、おおむね年功序列です。
そのため、45~54歳は、役職に付いたり責任が増えたりする傾向が高いと考えられ、役職ならではの負荷を抱えたりストレスを感じたりする機会が増えるのではないでしょうか。
管理職研修や資質に見合った役職配置など行うことで、これらの問題は緩和できるかもしれません。
【考察③】民間企業より官公庁の方が、全体的に高ストレス者率が低いという結果が得られた
一般的に、公務員は立場や収入が安定しており世間の信頼が厚いと言われています。
そのため、組織の一員となることで比較的安心感を得やすい仕事だと考えられます。
さらに、競合他社が存在せず、利益を追求したり競争を強要されたりしない環境であることから、プレッシャーを感じたり性急さを求められたりする機会が減り、比較的負荷の少ない業務となる傾向があるのではないでしょうか。
それらのような背景が、結果に表れたのかもしれません。
【考察④】双方に共通して、55歳以上で高ストレス者率が下がっている
2008年に公開された厚生労働省「労働経済の分析-働く人の意識と雇用管理の動向-」(平成20年版労働経済白書)では、人は年齢を経るにつれ、働く目的を「お金を得ること」から「自由時間を増やすこと」や「生きがいを見つけること」へ変化させる傾向を持つという結果を得ています。
視野が広くなるだけでもストレス対処は上手になるものですが、価値観が経年変化することで仕事一辺倒な考えが薄れ、多角的な視点で仕事をとらえるようになるために余裕が生まれるのでしょうか。
盲目的な若年世代と比較すると、この世代の強みと言えるかもしれません。
<参考>厚生労働省「労働経済の分析-働く人の意識と雇用管理の動向-」の「第2章 働く人の意識と就業行動」
以上のように、民間企業と官公庁との間には、等級制度など就労環境の違いがあるのではないか、という考察を導くことができました。
膨大なストレスチェックデータを分析することで、業種別の特徴を考察することが可能です。
執筆者
- 株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所 アナリスト