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<職場環境が良くなる!コミュニケーション論>【第3回】応用編~事柄よりも感情をキャッチしよう!~

最終更新日 2023-01-10

全3回のシリーズでお届けしてきた「職場環境が良くなる!コミュニケーション論」もいよいよ最終回です!

第3回目は、「応用編~事柄よりも感情をキャッチしよう!~」です。

人間は、種々の複雑な感情を持ち、また言語によって感情を表すことのできる唯一の生物です。
私たちの言動は、常に感情に左右されていると言っても過言ではありません。

第1回でもお伝えしましたが、「わかってもらいたい」という人間の承認欲求は「出来事そのもの」よりも出来事によって「生じた感情」をわかってもらいたいのです。
職場で起こる事例をもとに、コミュニケーションにおいて事柄よりも感情に着目すべきことを学んでいきましょう。

どのような返答が適切!?

職場でのよくある会話を再現してみます。
部下からこのように話しかけられました。

「〇〇のプレゼン、想像よりもお偉い方が多くて会場も大きくて、途中で頭が真っ白になってしまいました(泣)」

あなたが上司の場合、どのような返答をしますか?

A 「参加者や会場は事前に確認しておくべきだよ。準備不足だね」
B 「そっか、それより明日の打合せの準備できてる?」
C 「お疲れ様!私も今日のアポイントで、かなり厳しい質問されてタジタジだったよ」
D 「それは大変だったね。〇〇さんずっと準備頑張っていたもんね。よく頑張ったよ」

上手な対人関係をつくるコミュニケーションのポイントは、「部下はどのようなことを伝えたくて上司のあなたに話しかけてきたのか?」を考えることです。
A~Dの返答パターンについて、順に解説していきたいと思います。

A「参加者や会場は事前に確認しておくべきだよ。準備不足だね」

解決思考の上司にありがちなパターンです。
相手の感情を受け止めずにアドバイスをしており、加えてアドバイスがYouメッセージになっています。
(「(あなたは)参加者や会場は事前に確認しておいたほうがいいよ。(あなたは)準備不足だね」)

部下は、自分の感情を無視されたどころか、行いも否定されたように感じてしまいますので、まずは相手の感情を受け止めましょう。
否定やアドバイスは現時点では不要で、アドバイスは相手から尋ねられてから答えるので十分です。
また、アドバイスの伝え方は、Iメッセージ「私個人としては、〇〇と思うよ」が原則です。

B「そっか、それより明日の打合せ準備できてる?」

本人の事柄も感情も無視しています。
「それより」は、あなたの話は重要でないと捉えられ、しかも話題を変えることで部下の話はなかったことになり、上司のあなたに伝えた意味がなくなってしまいます。
これほど悲しいことはありませんね。
「あぁこの人には話さなければよかった」と部下は感じ、きっともう上司のあなたに何かを本音で話すことはなくなるでしょう。

こちらも、まずは相手の感情を受け止めましょう。
会話のキャッチボールは、まずボールを受け止め、相手に届くように返すことが重要です。
勝手にボールを奪って別の場所に投げては、コミュニケーションは続きません。

C「お疲れ様!私も今日のアポイントで、かなり厳しい質問されてタジタジだったよ」

仲が良い関係性にありがちなパターンです。
ねぎらったつもりでも、相手の感情をスルーして自分の話に置き換わっています。
上司のあなたも聞いてもらいたいことがあったり、自分の弱みを見せて部下を安心させようとしたりしているのかもしれませんが、部下の話を遮っており、感情を受け止めたとは言えません。

ABと同様、まずは相手の感情を受け止めましょう。
自分の例を引き合いにして部下とバランスを取ろうとしなくて大丈夫です。
自分の話は、求められてから話すでOKです。

D「それは大変だったね。〇〇さんずっと準備頑張っていたもんね。よく頑張ったよ」

「……頭が真っ白になってしまいました(泣)」という部下の泣きたい気持ちを「大変だったね」という言葉に変換して伝えています。
部下は、大変だった状況を上司に共感してもらえた、わかってもらえたと感じるでしょう。

また「ずっと準備頑張っていたもんね」は、これまでの努力の姿勢を見ていた証で、結果だけでなくプロセスを含めて評価していると言えます。
事柄(想像よりもお偉い方が多くて会場も大きくて)よりも本人の「感情」に寄り添い支持しているので、わかってもらえた感、認めてもらえた感があり、「あぁこの上司に話して良かった!」と思いますね。
この上司はどのように対応しているのか聞いてみたい!アドバイスをもらいたい!と業務向上のための会話が広がるかもしれません。

事柄よりも感情をキャッチするコミュニケーションについて、おわかりいただけましたでしょうか。
返答パターンはあくまで例ですが、上手な対人関係をつくるコミュニケーションのポイントは、「相手はどのようなことを伝えたくて自分に話しかけてきたのか?」を考えることです。

特に、喜怒哀楽の感情がある会話の場合、その感情「嬉しかったね」「悲しかったね」「それは怒るね」など、相手と同じようなトーンで伝え返してあげると、相手の承認欲求を満たすことができ、良好な対人関係を築くことができるでしょう。

職場にも笑いが必要!

職場でのコミュニケーションについて、下図のようなデータがあります。

約7割の人は、職場でおしゃべりをして笑うことがないのですね。
職場でのコミュニケーションの目的は、生産性向上やメンタルヘルス対策です。
友人のように仲良くなることが目的ではありませんが、笑えるかどうかは、いきいきした職場の指標の一つとして考えることができます。

・リラックスできる環境か
・認めてもらえる環境か
・仕事を抱え込まず共有できているか
・仕事の相談ができるか
・助け合いの雰囲気があるか
・自由な発言ができるか

また、500万人を対象に行われたアメリカの研究があります。

職場に友人と呼べる人が3人以上いると、人生の満足度が96%上がり、自分の給料への満足度が2倍になる。
職場に最高の友人と呼べる人がいると、仕事のモチベーションが7倍になり、作業スピードがあがる。

出所元:Tom Rath著『Vital Friends: The People You Can’t Afford to Live Without』より

つまり、職場が「自分が自分らしくいられる」、「安心、安全である」「自分が必要とされているている」場所であることが、仕事の満足度や生産性向上には必要な要素なのですね。

まとめ

「職場環境が良くなる!コミュニケーション論>」を全3回のシリーズでお届けしました。

どのようなコミュニケーションをするかによって、職場の人間関係は大きく変わります。
コミュニケーションを工夫することで職場環境が良好となり、仕事の生産性が向上することも知られています。

上手な意思伝達にはコツがあります。
職場環境を改善したいけれど、何から手を付けたら良いか分からない方は、本連載を参考に、学んだスキルを日頃の職場で実践してみてください。

DL

執筆者

【保健師】高橋 さなえ
【保有資格】保健師/看護師/公認心理師/第一種衛生管理者/人間ドック健診情報管理指導士/産業カウンセラー/上級心理カウンセラー
【コメント】ドクタートラスト創業初期メンバーの一人。保健師や公認心理師の目線を活かしてコンサルタント・研修講師として活動中。ストレスチェックは、個人だけのためのものでなく組織の成長や生産性向上に欠かせない重要なツールです。みなさまが思う目指す職場像に近づけるよう、役立つ情報をわかりやすく発信していきます。

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