REPORT

組織の未来を変える研究を、世の中へ。

  1. HOME
  2. ブログ
  3. コラム
  4. 新入社員の主な退職理由とは?若年層の退職を予防するためのポイント

新入社員の主な退職理由とは?若年層の退職を予防するためのポイント

最終更新日 2023-01-10

2022/12/21更新

4月になり、新卒社員を迎えた企業さまでは、新入社員研修などをなさっている頃でしょう。
新しく入社してきた社員たちに「いきいきと輝きながら働いてほしい」と人事担当や上司の方々はもちろん、新卒社員自身も含め、誰もが願っていることではないでしょうか。
しかし、新卒社員に関する調査結果を見てみると、厳しい現状が浮かび上がってきます。

今回はせっかく採用した人材がなかなか定着しないとお悩みの企業さまに、若年層の退職を予防するためのポイントをお伝えします。

大卒新入社員3年以内の退職率は31.2%!主な退職理由とは

「大卒新入社員は3年以内に31.2%が退職する」
冒頭から衝撃的な数値をお示ししました。
これは厚生労働省「令和2年度新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況」から判明したことですが、なんと新卒3年以内の3人に1人が早期退職をしています。

また、就職みらい研究所「就職白書2019」によると、新卒採用には、1人当たり72.6万円(2018年度)のコストがかかっており、せっかく採用した若手が早期退職してしまうことがどれだけ企業にダメージをもたらすか、この数字から理解いただけるでしょう。
新卒社員の主な退職理由は下記のとおりです。

図1
労働条件が良くなかった

新卒社員の退職理由第1位が「労働条件が良くなかった」でした。
「入社してみたらブラック企業だった」なんてことも多く、実際の労働条件は実際に働いてみるまでわかりません。
ブラック企業まではいかなくても、なんとなく休みをとりにくい雰囲気や残業を強制する空気があって、結果的に労働条件が悪くなってしまうケースは非常に多いため、退職理由第1位もうなずける結果です。

肉体的・精神的に健康を損ねた

「肉体的・精神的に健康を損ねた」という退職理由も上位でした。
このことから、新入社員に心や体の問題を抱えている人が多いことがわかります。
新入社員は大きな不安を抱えて入社してきており、些細なことで不安定なメンタル状態に陥ってしまうため、きめ細やかなケアが求められるでしょう。

人間関係が良くなかった

「人間関係が良くなかった」を退職理由としてあげている新入社員は約半数にものぼります。
人間関係は新入社員に限らず退職理由の上位にランキングされる事柄であり、多くの労働者が頭を悩ませる問題です。
特に新入社員は、人間関係の構築と業務の習得を同時に行う必要があるため、「業務を覚えることに必死になっていて、気がついたら職場で孤立していた」という状況に陥ってしまうことも考えられます。

賃金の条件が良くなかった

「賃金の条件が良くなかった」という退職理由も、新入社員に限らず退職理由の上位を占める事柄です。
賃金は働くうえで最も重要な条件のひとつであり、納得のいく賃金を提示できなければ、退職を引きとめるのは難しいでしょう。
とはいっても、企業の業績に直接関係する部分であり、すぐに対応するのが難しい問題でもあります。

自分がやりたい仕事とは異なる内容だった

新入社員の退職理由には「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」というものも存在します。
自分に向いていると思って入社した職場でも「やっぱり合わなかった」となることは良くあることで、仕方のないことです。
昔は「向いていないと思っても最低3年は……」と言われていましたが、現代ではある程度転職が一般的になり、やりたい仕事ではないとわかったら多くの社員が退職を選ぶでしょう。

新入社員特有の退職理由は?

「労働条件が良くなかった」「賃金条件が良くなかった」など、一般的に多く該当しがちな理由があるなかで、新たな環境にまだ慣れてない新卒社員特有の退職理由が以下の2つです。

「人間関係が良くなかった」
「仕事が上手くいかず自信を失った」

ほかの「労働条件が良くなかった」「賃金条件が良くなかった」などは現実的に即時対応が難しい面もありますが、人間関係や自信の構築は、企業として取り組むことが可能な部分と考えられます。
さらに、これらの課題に取り組むことは退職予防のみならず、若年層の生産性向上にもつながることが、ストレスチェックデータから見えています。

新入社員の退職を防ぐためには?

労働人口が減り続けている日本にとって、新入社員の定着は死活問題です。
では、どうすれば新入社員の退職を防ぎ、長く働いてもらうことができるのでしょうか。

社内の評価制度を見直す

旧態依然とした年功序列型賃金制度は、新入社員の不満を招きやすいため、成果主義へ移行している企業が増えています。
成果ではなく、企業に所属している年数や会社で働いている時間を重視する人事評価制度のままだと、新入社員は「どれだけ成果を残しても意味がない」「残業しないと稼げない」という不満を抱くでしょう。
どれだけがんばっても、長く働いている社員には勝てないという人事評価は、新入社員のやる気を大いに削ぐものであり、早急な評価制度の見直しが必要かもしれません。

また、有給や育児休暇の整備も新入社員の退職を防ぐためには重要です
企業によっては、有給や育児休暇を取ると評価が悪くなってしまう場合もあり、こうしたブラック企業体質は、現代の新入社員にとって受け入れがたいものです。
有給や育休などの取得を積極的に奨励し、福利厚生を充実させて、企業の体質を改善していくことが新入社員の定着につながります。

社内コミュニケーションを活発にする

当たり前ですが、新入社員はなにもわからず誰も知り合いがいない状態であり、大きな不安を抱えて入社してきます。
その不安を解消するのはコミュニケーションです
社内でコミュニケーションを活発に行い、誰でも発言できる空気を醸成することで、「わからないことを質問する」という新入社員のハードルを下げることができます。
こうした「なんでも聞ける」という状態は、新入社員の安心感につながり退職を防止することができるでしょう。

しかし、あまり過度なコミュニケーションを強要すると、それも退職原因になってしまいます。
適切な距離感を保つことが大切です。

残業時間など労働時間を見直す

現代はワークライフバランスの考えかたが定着してきており、「プライベートの時間を犠牲にして働きたい」と考える新入社員は稀です
定時を過ぎて残業を強要すれば、大きな不満を抱く人が多いでしょう。
もちろん、まったく残業をしてはいけないというわけではありません。
残業をする場合は新入社員に確認をとり、残業を拒否できる選択肢を用意することが大切です
また、残業代のシステムについても細かく説明し、サービス残業が絶対に発生しないように徹底しましょう。

「人間関係」や「自信」は20代のワーク・エンゲイジメントとの相関が強い!

図2

上記は、2020年度ドクタートラストでストレスチェックを実施した約24万人のデータから、20代のワーク・エンゲイジメントと相関の高い尺度を示しています。
人間関係についての尺度(職場の一体感、上司からのサポート)や、自信や自己肯定感の向上につながる尺度(成長の機会、ほめてもらえる職場)といった、不足すると退職を考え始める要因となるものが多く入っていることがわかります。

つまり、退職理由となる課題の改善は退職を予防するだけではなく、20代のワーク・エンゲイジメントを上げ生産性を高める、一石二鳥の効果を生む取り組みであるといえます。

まとめ

社会人として希望や不安など、さまざまな思いを抱きながら働き始める新卒社員に最も影響を与える存在は、やはりその組織やチームの管理職の方です。
そして管理職の方こそが、新卒社員の退職予防とワーク・エンゲイジメント向上の鍵を握っています。

株式会社ドクタートラストでは新入社員の定着を目的とした職場改善に役立つ組織改善・人材育成コンサルティングサービスであるSTELLAを提供しています。
STELLAを利用して職場環境を改善することで、新入社員が定着しやすい土壌をつくることが可能です。
また、新入社員に寄り添って、信頼関係を構築できる優秀な管理職の育成を目指します。

<参考>
・ 厚生労働省「令和2年度新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況」
・ 就職みらい研究所「就職白書2019」

DL

執筆者

【シニアコンサルタント】倉科 彩香
【シニアコンサルタント】倉科 彩香
【保有資格】健康経営エキスパートアドバイザー
【コメント】前職ではやりがいはあったものの、長時間労働が当たり前の環境で働く中で、ワークライフバランスについて考えるようになりました。今では健康経営エキスパートアドバイザーとして、ストレスチェック結果を活用した職場環境改善に取り組む企業のコンサルティングや、各種セミナー等を行っております。これまでの学びをもとに「健康でいきいきと働く人」を世の中に増やすために役立つ情報をお伝えします。

関連記事