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組織の未来はワーク・エンゲイジメントで決まる<前編>

最終更新日 2023-01-10

「あなたは、現在の職場を親しい友人や家族、自分の子どもにおすすめしたいですか?」
これは、ワーク・エンゲイジメントを測るのにもっとも簡単な質問です。

迷わずに「YES!」と答えられる人がどのくらいいるでしょうか。
決してあなただけでなく、あなたの職場の従業員も、職場に対してきっと同じように感じているのではないでしょうか。

日本企業のワーク・エンゲイジメントは低い

ストレスチェック80項目版には、ワーク・エンゲイジメントに関する設問が2つあり、それぞれの回答割合は以下のとおりです。

・ 仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる
そうだ、まあそうだ(良好回答):38.6%、ちがう、ややちがう(不良回答):61.4%
・ 自分の仕事に誇りを感じる
そうだ、まあそうだ(良好回答):67.9%、ちがう、ややちがう(不良回答):32.1%
出所元:株式会社ドクタートラストが実施した2020年度ストレスチェック受検者240,275名の集計データより

活力に関する設問は約6割が、誇りに関する設問は約3割がネガティブな回答でした。

ワーク・エンゲイジメントは自然発生するものではない

ワーク・エンゲイジメントは、しばしば個人のモチベーションや価値観と混同されることがあります。
しかしモチベーションや価値観とワーク・エンゲイジメントが大きく異なるのは、個人の性格や感じ方によって自然に湧き上がる類いのものではない点です。
ではワーク・エンゲイジメントとは一体何か、以下に2つの定義を紹介します。

① 企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識を持っていること
ウイリス・タワーズワトソン社
② 熱意(仕事に誇りや、やりがいを感じている)、没頭(仕事に熱心に取り組んでいる)、活力(仕事から活力を得ていきいきとしている)の3つが揃った状態
オランダ・ユトレヒト大学シャウフェリ教授ほか

上記①、②を踏まえれば、ワーク・エンゲイジメントとは「従業員一人ひとりが組織の掲げる戦略・目標を適切に理解したうえで、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」といえます。
ポイントは、組織が戦略を掲げるだけ、もしくは個人が力を発揮するだけでは成り立たず、必ず組織や業務内容との「関係性」が前提とされている点です。
エンゲイジメント(engagement)が“約束”の意であるように、必ず相手との持続的な合意があって初めて存在するものなのです。

ワーク・エンゲイジメントは業績に直結する

ストレスチェック制度は「メンタルヘルス不調の未然防止」を目的としていますが、前述80問版に盛り込まれている「ワーク・エンゲイジメント」は、メンタルヘルス不調の未然防止にとどまらず、組織のパフォーマンスにさまざまな影響をもたらすとされています。
実際、Gallup社の調査によりワーク・エンゲイジメントの高いチームは、低いチームより以下が大幅に上回ることが判明しています。

・ 収益性
・ 生産性
・ 株価収益率(EPS)
・ 顧客満足度

さらに、ワーク・エンゲイジメントの高いチームは、低いチームより以下が少ないという相関関係も明らかになっています。

・ 事故や品質欠損
・ 離職率・転職率
・ 欠勤

Gallup「Gallup Q12® Meta-Analysis」ほかをもとに筆者作成

さいごに

ここまで、ストレスチェックの設問における「ワーク・エンゲイジメント」が組織にとっていかに重要な指標であるかをご紹介しました。
さいごに、ワーク・エンゲイジメントが単体で存在するものではなく、他のストレス要素や職場環境などの結果として現れるアウトカム指標である点は注意してください。
付け焼刃の対応や、高ストレス者に限定したハイリスクアプローチだけでなく、他のストレス要因や職場環境などの総合的かつ抜本的見直しがワーク・エンゲイジメントを高めていくためには欠かせません。

ワーク・エンゲイジメントの高い組織は、真の意味で「メンタルヘルス不調」と対極の状態であり、組織の未来はワーク・エンゲイジメントで決まると言っても過言ではなさそうです。

DL

<参照>
・ 吉田由起子、岡田恵子(ウイリス・タワーズワトソン)「エンゲージメント:back to basics!」
・ Wilmar B. Schaufeli、Marisa Salanova、Vicente Gonzalez-roma、Arnold B. Bakker「The Measurement of Engagement and Burnout: A Two Sample Confirmatory Factor Analytic Approach」ほか
・ Gallup「Gallup Q12R Meta-Analysis」
・ Susan Sorenson(Gallup)「How Employee Engagement Drives Growth」

執筆者

【チーフアナリスト】服部 恭子
【職位】チーフアナリスト
【コメント】毎日多くの時間を過ごす職場環境が良いものになるように、また、健康で元気に働き続けられる人が増える社会になるように、ストレスチェックをきっかけに、職場環境改善に取り込もうとする企業様に役立つ情報をお届けできるように努めてまいります。

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