
会社が今すべきハラスメント対策とは
最終更新日 2023-03-02
会社を存続させるために
日本の労働人口の減少に歯止めがかからず、遠からず江戸時代程度まで人口が減少するとまで言われる現在、雇用難は会社存続に直結するレベルで深刻さを増しています。
そんな中、雇用する労働者の労働市場への流出を避け、新しい雇用を確保するため、そして生産性を上げ会社としての競争力を高めるために組織として最低限取り組まなければならないことがいくつかありますが、ハラスメント対策もその大きな一つです。
ハラスメントのもたらすリスク
言うまでもなく、ハラスメントの起こる会社はリスクを抱えることになります。
離職・休職の発生
ハラスメント、もしくはハラスメントが疑われる言動が行われる職場では、貴重な労働力の減少を招き、結果的に残された労働者への過剰な負担を強いることになり、それを原因とした新たな離職者・休職者を生む悪循環につながることになります。
結果的に、貴重な原動力である労働者を失う事につながり、労働力不足から会社存続リスクが生まれます。
生産性の低下
ハラスメントに類する言動に晒されると当事者だけでなく、周囲の見聞きする第三者にも生産性低下の悪影響が発生します。
昨今重要性の叫ばれるワーク・エンゲイジメントも、ハラスメントが疑われる言動の行われるような会社では向上は難しく、生産性の低下、ひいては企業としての競争力を損失につながります。
社会的信用の低下
日本での法改正も同様ですが、社会的にハラスメントを許容しない風潮は高まっています。特に、現在ではネット上で即座に情報が拡散し、すべてを消し去ることが非常に困難になりました。訴訟に発展すればメディアにも取り上げられ、社会的に信用を失うことにつながります。
結果的に、求職者の減少や投資対象から外されてしまうなど労働力だけでなく、資金調達にも影響を及ぼし組織としての存続が難しくなってしまう可能性もあります。
会社としてできること
「会社としてやるべきこと」として、ハラスメント対策関連法に定められた措置義務が課せられています。
ただし、措置義務とされた内容は「これだけは備えていなければ事態発生時に対応することができない最低限」です。特に、形式的に済ませてしまいがちな「方針の策定と周知啓発」にはしっかりと力を入れて対応しているでしょうか?現在、ゼロとは言いませんが、誰が見てもあからさまなハラスメント事案の発生は減少しているように感じています。
あからさまなハラスメントは、犯罪行為といっても過言ではありません。
また、ハラスメントにかかわる相談の件数自体は増加傾向ですが、「グレーゾーン事案」や「グレーゾーンから発展した事案」が増えています。
あからさまな、犯罪行為でなければ大丈夫と感じる労働者と、受け手が不快感を抱くのであれば「ハラスメント」だと捉えている労働者の間では問題解決につながるような建設的な対話の成立は難しいでしょう。
加えて、「ハラスメントは従業員同士の個人の問題」と考える組織では、ハラスメントか否かのジャッジを現場に預けがちですが、結果的に、個人の価値観の相違からコミュニケーションエラーを誘発し、それが常態化することによって職場環境が悪化しさまざまなリスクを招きます。
もちろん、行為者とされる労働者だけでなく、会社としての責任も問われることになるため、人、金、時間など貴重なリソースを対応に割くことにもつながります。
会社組織として「どこまでは業務遂行上の必要性を認めるのか」「あからさまなハラスメントはもとより、そういった事案が発生しないためにどのような言動を容認しないのか」を明確に打ち出し、いわゆるグレーゾーンの幅を狭める組織的な働きかけが必要であり、それは会社の方針として明確に表明し、その方針に即した規程類を整備し周知徹底すべきです。
この方針をなおざりにすること自体がリスクを増長し、相談や通報として届く情報の精度を低下させ対応を複雑かつ困難なものにする一因になっています。
今できる合理的な措置を
現在の対応や措置の効果性などを確認し運用等の見直しを行うことは重要です。
しかし、新たに時間やコストをかけて実態調査を行うことが難しいこともあるでしょう。
50名以上の労働者を常時雇用する事業主であれば、まずは手元にあるデータの活用から始めてみてはいかがでしょうか。
実施が義務付けられているストレスチェックの設問の中にも一問だけ「職場で自分がいじめにあっている(パワハラ・セクハラを含む)」という設問があり、受検者は「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の4択で回答します。
ハラスメントの実態調査を別途行うよりも従業員へのインパクトも少なく、一定の情報を収集する一つの方法になります。
ハラスメントに関する設問に対して過剰に反応し、過敏に避けたがる会社も存在しますが、この設問でわかることは、あくまでも回答者本人が「そう感じている」かどうかであり、実際のハラスメント事案の発生件数ではありません。
しかし、結果から、会社や部署などの集団内でのコミュニケーションの状況や、従業員のハラスメントに対する認識状況をある程度把握することができます。
また、「そうだ」「まあそうだ」と主張する人数に近い数の相談や通報が会社の設置した相談窓口に「情報収集できているかどうか?」を確認することで、現在の相談窓口の運用状況や相談のしやすさなどを推しはかることができます。
情報収集ができていない状況で、主張する従業員が多い場合には相談のしづらさや、相談に対する会社の対応に対する不安がある可能性があります。
会社は、情報がなければ明確に対応をすることができず、情報収集が遅くなれば遅くなるほど問題が深刻化したり、受け手の被害感情が高くなることから解決が困難になっていきます。
まずは、しっかり会社としてハラスメントを許さない方針表明をし、規程類の整備とともに相談への対応フローなども明確に定め周知することで、安心して相談や通報など会社への情報提供がしやすい状況を構築し、労働者とその就業環境を守るとともに、会社としてのリスクヘッジを行ってください。
執筆者

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【保有資格】産業保健法務主任者/メンタルヘルス法務主任者/上級ハラスメントマネージャー/ハラスメントカウンセラー/健康経営アドバイザー
【コメント】人生の中での多くの時間を過ごす「職場」という環境において、「健康にいきいきと働き続ける」そんな当たり前の幸せを実現するお手伝いとして、企業へのコンサルティングだけでなく、実際に現場で働く従業員のみなさんとワークショップや研修、カウンセリングなどを通じてかかわりお手伝いをしています。
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