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ジョブ・クラフティングのやり方とは?具体的な導入方法から事例までご紹介

最終更新日 2023-01-10

2022/12/21更新

仕事のやりかたを工夫することで、やらされ感をやりがいへと変化させていくのがジョブ・クラフティングです。
若手社員はもちろん、ベテラン社員にも研修を行うことで仕事に対するストレス軽減やエンゲイジメント向上が見られることから、今多くの企業で注目されています。
今回は具体的な導入方法からワークの事例までお伝えしていきます。

【ジョブ・クラフティングの考え方はこちら】

ジョブクラフティングとは

ジョブクラフティングとは、従業員一人ひとりの認知や行動を変えていくことで「やりがい」を生み出し、主体的に仕事に取り組めるようにする手法です。
企業からではなく、従業員が自分で考えて仕事への取り組みかたを変えていくのが大きな特徴であり、モチベーションや生産性の向上などの効果が期待できます。

ジョブクラフティング研修の進め方

ジョブ・クラフティングの研修は主に以下のステップに分かれています。

1 ジョブ・クラフティングの目的を知る
2 ジョブ・クラフティングのやり方を知る
3 事例をもとにジョブ・クラフティング手法を学ぶ
4 実際に仕事と向き合ってみる
5 振り返り研修(場合に合わせて複数回の実施)

まず、何のためにこの研修を行うのかをしっかりと理解してもらい、そのうえで具体的なやり方を学習。ワークとして自分の仕事について考え、1ヶ月ほどジョブ・クラフティングを実践した後、その変化を一緒に振り返ります。
プログラムによっては振り返りを1ヶ月おきに2、3度行うこともありますし、3ヶ月後に中間振り返りを行い、半年後の完了を目指すという取り組み方をしているケースもあります。
研修の目的はジョブ・クラフティングの思考を習得し、実務に落とし込むことであり、そのためには実践後の振り返りが重要です。

ジョブ・クラフティングの具体的な研修方法

では具体的な研修方法についてみていきましょう。

1 ジョブ・クラフティングの目的を知る

まず、ジョブ・クラフティングをなぜ行うのかをきちんと理解してもらう必要があります。
普段からやらされ仕事の思考を持つ従業員の場合、「また研修をやらされている」という意識で研修を受けている可能性があり、この状態ではジョブ・クラフティングによる改善効果は期待できません。
ジョブ・クラフティングは数々の研究により、実施後の仕事へのストレス軽減、またワーク・エンゲイジメントの向上が確認されています。
研修によって得られる、「働きやすさ」「やりがい」というメリットを真摯に伝えることが重要です。

ジョブ・クラフティングの基本的な考え方については、以下の記事に記載があります。

2 ジョブ・クラフティングのやり方を知る

ジョブ・クラフティングを実施する際には、以下3つの視点が重要です。

・仕事のやり方(内容や方法)
・仕事に対する捉え方
・周りの人(対人関係)

上記3つの視点から仕事を捉え分析することで、どういうときに人はやりがいを感じ、仕事に対して能動的に取り組むようになるのかを、具体的に理解できます。
以下にやりがいを感じるタイミングや理由をまとめてみました。

・ 仕事のやり方(内容や方法):コツコツと地道な作業が好きだから事務仕事がいい、人と話すのが好きだから営業がしたい、など
・ 仕事に対する捉え方:自分のキャリアに役立ちそうだから関わりたい、社会貢献性をしたい、など
・ 周りの人(対人関係):周囲の期待に応えたい、など

3つの視点から考えていくと、仕事にはやりがいを生み出しうる側面が多数存在していることがわかります。
同時に、今の仕事でやりがいを感じられない理由も見えてくるのではないでしょうか。
まずは今の課題を把握し、そこからアプローチ方法を探していくのが、ジョブ・クラフティングの基本の考え方です。

3 事例をもとにジョブ・クラフティング手法を学ぶ

実際に取り組む前に、架空の事例を用いてジョブ・クラフティングの手法を具体的に学んでおきましょう。


Aさんの状態を、仕事のやり方(内容や方法)・仕事に対するとらえ方・周りの人(対人関係)の3つの視点から見ていきます。

<仕事のやり方(内容や方法)>
現状:時間が作れず業務に追われている
目標:やりたい仕事をする時間的余裕を作る
【工夫】
・ 業務を見直し、自分でなくてはならない仕事、ほかに任せても大丈夫な仕事に分けて自らの業務軽量化を図る
・ 手順を改めて書き出して、効率化を図れる仕事がないか考える、など

まずは仕事の内容や方法に関わる部分を見ていきます。
部下の差し戻し業務の多さや業務上の無駄な手順など、何が原因で業務に追われているのかを考えてみましょう。
Aさんの事例では、業務の見直しを行った結果、自分のやりたい仕事をする時間を捻出できるようになっただけでなく、自分の仕事の理解をより深めることにもつながりました。
やりたい仕事に着手できるようになれば、モチベーションも上がり、より良い結果が期待できます。

<仕事の捉え方・目的>
現状:上司の指示や部下の指導に追われている
目標:中間管理職として組織を守り貢献する
【工夫】
・ 自分自身が中間管理職として何を行うべきなのかを考えてみる
・ 上司の意図を正確に理解できているのかを見直す
・ 明確な目的をもって部下を指導できているのかを見直す、など

仕事の捉え方や目的はモチベーションの根源となる部分です。
「なんのための指示なのか」「何を求められているのか」「自分が働く意義」をいまいちど考え改めて目標を設定すると、仕事に向き合う際の考えかたが大きく変わります。
目的意識をもって仕事をすることは、ストレスの軽減につながります。また、やりがいが生まれ、モチベーション向上も期待できます。

<周囲の人(対人関係)>
現状:上司の指示や部下の指導に追われている
目標:中間管理職としてより円滑なコミュニケーションを心掛ける
【工夫】
・ 部下の指導をわかりやすくできているか、仕事のゴールを含めて伝えているか見直す
・ 信頼関係を生むコミュニケーションやかかわり方ができているか見直す、など

対人関係においては、上司や部下、同僚だけでなく、仕事でかかわるすべての人との関係性がポイントとなります。
コミュニケーションが円滑か、信頼関係が築けているかなどに注目しましょう。
Aさんの場合、穏やかにコミュニケーションをとる時間がないほど業務に追われている可能性もあります。雑談を意図的に行うようなかかわり方をすることで、部下との関係性が改善されるでしょう。

4 実際に仕事と向き合ってみる

事例で手法を学んだ後は、実際に自分の仕事と向き合って、ジョブ・クラフティングを行いましょう。
実施の際に重要なポイントをご説明します。

自分の仕事に優先順位をつける

自分の仕事を書き出し、今までジョブ・クラフティングができていたか精査していきます。また、その業務の重要度についても評価していきましょう。
ジョブ・クラフティングできていたかどうか、以下の3段階で評価していきます。

A:できていた
B:あまりできていない
C:できていない

業務の重要度が高く、ジョブ・クラフティングできていないものから着手していきましょう。

3つの視点から仕事について考える

業務の目標を決めて、3つの視点に基づいた工夫を書き出します。工夫の方法は可能な限り具体的に考えてみましょう。
下記のワークシートを活用するとよりスムーズに分析が可能です。

分析が完了したら、目標に向かって工夫を行いながら改めて業務にあたります。

5 振り返り研修(場合に合わせて複数回の実施)

研修の1ヶ月後を目安に、実際の取り組みに対しての振り返りを行います。
実施後の変化をヒアリングし、必要であれば軌道修正を行うなどして意識づけをしていきます。
1ヶ月では大きな変化が現れない場合もありますが、多くのケースで意識が大きく変化し、仕事に対するモチベーションの向上を感じることができるでしょう。
またこうした振り返りを行うことで、ジョブ・クラフティング的思考を習慣化させ、今求められる自律型人材への育成にもつながります。

ジョブ・クラフティングのやりかたのコツ

実際にジョブクラフティングを行う際に参考になる、やりかたのコツを紹介します。

あくまで主体的な行動を促す
自分の業務について見つめなおす機会を与える
環境の整備
失敗を許容する
チャレンジを称賛する価値観の共有

ジョブクラフティングを実施しようと考えたときに、つい企業から「ジョブクラフティングをしよう!」とトップダウンで指示してしまいがちですが、それでは意味がありません
あくまでも、ジョブクラフティングは従業員が自ら考えて実行することが重要であり、ジョブクラフティングに関するセミナーや勉強会を実施して「自分の仕事の取り組みかたについて見つめなおす機会」を与えて、主体的な行動を促していきましょう。

また、従業員にある程度の裁量を与えて、工夫やチャレンジを行える環境の整備も重要です。
加えて、「失敗から学んでいこう」という失敗を許容する環境を整備して、従業員の心理的安全性を確保していきましょう。
こうした「失敗を許容する」「チャレンジを称賛する」価値観を醸成していく取り組みは、ジョブクラフティングを効果的に実践していくために、企業が率先して行う必要があります。

さいごに

ジョブ・クラフティングは自分が何のために仕事をしているのかを明確にとらえ、目標に向かって自律的に動くことができる人材の育成を実現します。
新型コロナウイルスの流行などで、将来を予測するのが難しい現在は、常に自分で状況に合わせた判断ができる自律型の人材が求められているため、ジョブ・クラフティングの重要性はより一層高まっていくでしょう。
ストレスチェック研究所では、集団分析結果から見える課題をもとに、さまざまな研修も行っております。もし、エンゲイジメントの低さや高ストレス者などに悩んでいる場合は、いつでもご相談ください。
ジョブ・クラフティングやアサーションなど、課題に合わせた研修を行うことで、組織の活性化や改善を行います。
DL

執筆者

【シニアコンサルタント】杉山 敏之
【職位】株式会社ドクタートラスト執行役員/シニアコンサルタント
【コメント】長年、営業職として多くの顧客と接してきました。年々労働力人口は減り続け、優秀な人材を確保することが、企業の発展に直結する時代になります。ストレスチェックの結果からは企業の現状を可視化できます。ストレスチェックを通じ、「元気に・楽しく・働きやすい」職場環境構築への情報発信ができるように努めていきます。

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