
マネジメントの視点からストレスチェックのデータをみてみよう②成長実感
最終更新日 2023-03-30
集団分析結果のなかには、若手層にストレスが偏っているケースも少なくありません。
若手社員とベテラン社員ではストレスの感じ方が異なるだけでなく、ストレスを感じるポイントも当然異なります。
今回は、シリーズ「マネジメントの視点からストレスチェックのデータをみてみよう」第2回、若手社員の成長実感ついて考えていきましょう。
年代別にみるストレス
2021年度ドクタートラストでストレスチェックを受検したおよそ32万人のデータをもとに、高ストレス者の割合を年代別に分析したところ、最も多かったのは30代で16.40%でした。
30代は、さまざまな役職を任される、結婚、出産といったライフイベントも多いことから負荷がかかりやすいと考えられます。
実際に、高ストレス者の割合は、30代を頂点とし、年齢とともに減少していく傾向があります。
また、会社の未来を担う20代は13.71%と比較的低めです。
自社の集団分析結果を見る中で、もし年代の高ストレス者の割合が平均より著しく高い場合などは原因究明に努める必要があるでしょう。

※年代は18歳~79歳まででカウント
20代のストレス傾向を考える
20代のストレス傾向は、どんなものなのでしょうか。
2021年度ドクタートラストでストレスチェックを受検した20代56,943名のストレスチェック回答を全国の傾向と比較し、偏差値を算出したところ、最も偏差値が低かった尺度は「役割明確さ」で偏差値44でした。
設問「自分の職務や責任がなんであるかわかっている」に対し、9.4%が不良な回答をしていました。
これは20代だからこその悩みや迷いにもつながっているように考えられます。
ほかにも、「技能の活用度」「仕事の適性度」なども偏差値46とやや低い傾向にありました。
逆に、「上司によるサポート」は偏差値59、「同僚によるサポート」は偏差値61と、しっかりとサポートを受けている様子もうかがえます。
また「上司のリーダーシップ」「褒めてもらえる職場」も偏差値61、「失敗を認める職場」も偏差値60と、かなり高い結果となりました。
20代はまだ業務を学んでいる途中であり、成長過程にあると定義して考えると、この数値の差にもかなり納得がいくのではないでしょうか。
しかし、冒頭で述べたように、企業によってはこうした数値が全国の20代の結果と比較すると著しく低いケースが散見されます。
成長過程であるのに失敗が認められない緊張感の中で仕事に取り組まねばならない職場や、上司からまったくサポートを受けられない職場では、ストレスが高まるのも当然です。
ではどんな職場環境であれば20代は仕事に満足だと感じながら働くことができるのでしょうか。
20代の仕事の満足度
20代56,943名の回答のデータから、仕事の満足度と相関の高い尺度を算出しました。
結果をランキングにすると以下の通りです。
1. 仕事の適性度
2. キャリア形成
3. 個人の尊重性
4. 成長の機会
5. 尊重報酬
6. 経済・地位報酬
7. 公正な人事評価
8. 経営層との信頼関係
9. 変化への対応
10. 上司のリーダーシップ
ここから20代の仕事の満足度を上げるためには、いかに「この仕事は自分に合っている」という実感を与えるかが重要であるとわかります。
しかし、仕事の適性度も、アウトカム指標と考えられます。
どうすれば適性を感じられるようになるのか。それは2番目以降に表れています。
まず大切なのは「キャリア形成」で、意欲を引き出せているか、キャリアに役立つ教育が行われているかです。
4番目に成長の機会、10番目に上司のリーダーシップが挙がっていることからも、成長が大きな役割になっていることがわかります。
さらに報酬という観点も大切です。
5番目の「尊重報酬」とは、上司からふさわしい評価を受けているか、6番目「経済・地位報酬」とは、自分の仕事に見合った給与やボーナスをもらっているかを指します。
次いで7番目の「公正な人事評価」では、人事評価の結果について十分な説明がなされているかが重要となります。
これらから、20代という未来を担う人材であるがゆえに、他の年代よりも「成長したい」という意欲が強く、また「頑張りをちゃんと評価されたい」と感じる傾向があることがわかります。
特に、「仕事の適性度」は30代では4番目、40代では6番眼、50代では4番目、60代では8番目と、常にランキングには入っているものの、年齢が上がるにつれて徐々に重視されなくなっていきます。
20代のうちに「この仕事は自分に合っている」という実感をいかに与えられるかは、ワーク・エンゲイジメントなどにも影響します。
20代が生きやすい職場づくりは必須条件
2022年度は、いわゆるミレニアムベビーと呼ばれる世代が新卒として入社を果たした年です。
現代日本において、少子化問題から労働人口の急激な減少は避けられず、企業としても人材採用・育成を最重要課題として取り組んでいるケースも増えていきました。
20代はまさに会社の未来を担う、最も重要な従業員です。
彼らは若いがゆえにさまざまなカラーに染まることができ、そしてフットワーク軽く転職することもできます。
それが会社の風土を一新することにつながったとしても、新しい風を受け入れ、企業として変革していかなくてはなりません。
さまざまな企業の担当者さまとお話していると、若手社員がいきいきできない会社ほど、お悩みも多く出てくるように感じます。
20年後、今社内にいる40代~60代の社員がいなくなった後に会社を維持し、作り上げていくのは今の20代だということをしっかり意識して、会社として変革を受け入れていかねばなりません。
ストレスチェックの結果から、もし何を着手すればよいのか迷ってしまったのであれば、ぜひ上記の満足度と相関の高い10項目、これについて貴社の20代の結果を見てみてください。
もし不足感が強そうだということが見えるのであれば、今のうちに対策を取るべきだと考えてぜひ職場環境改善に取り組んでいただきたいです。
ドクタートラストのストレスチェックでは年代別での分析を無料で行うことができます。
ストレスチェックを活用しての職場環境改善に取り組むにあたっては、我々コンサルタントにぜひお声掛けくださいませ。
執筆者

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【保有資格】産業カウンセラー/上級ハラスメントマネージャー
【コメント】典型的なブラック企業で数年働いた経験から「働きがい」や「仕事の楽しさ」は作ることができても、職場環境は一人の力ではつくることはできないと知り、楽しく働き続けられる職場環境に興味を持ちました。現在は産業カウンセラーとしての知識も活かし、多くの企業に携わりながら、皆が楽しく働ける職場づくりを目指しています。