REPORT

組織の未来を変える研究を、世の中へ。

  1. HOME
  2. ブログ
  3. コラム
  4. 新職業性ストレス簡易調査票「120項目」から職場環境改善のヒントを見てみよう!<後編>

新職業性ストレス簡易調査票「120項目」から職場環境改善のヒントを見てみよう!<後編>

<前編はこちら>
https://stella-sc.jp/2023/04/13/stresscheck-120/

前編では、+40設問のうち、前半21設問を「上司側の態度と言動」「適正と成長」の2つに分類し、解説しました。
なかでも、「上司側の態度と言動」に分類した設問は、上司側の態度や言動そのものであり、設問自体がそのまま上司側の行動指針となります。
また、「適正と成長」に分類した設問は、部下が主体的に望ましい行動を起こすために必要な要素であることもお伝えしました。

この後編では、後半19設問がどのような内容なのかに触れることで、職場環境改善のキーとなる事柄について見ていきたいと思います。

新職業性ストレス簡易調査票80項目と120項目の違いとは?

120項目版は、80項目版にどのような設問が追加されたものなのでしょうか。
追加40問のうち、後半19問をクローズアップしてみます。

G領域(会社や組織について)

・80項目版

尺度 設問
経営層との信頼関係 経営層からの情報は信頼できる
変化への対応 職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている
個人の尊重性 一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ
公正な人事評価 人事評価の結果について十分な説明がなされている
多様な労働者への対応 職場では(正規、非正規、アルバイトなど)
キャリア形成 意欲を引き出したり、キャリアに役立つ教育が行われる
ワーク・セルフ・バランス(ネガティブ) 仕事のことを考えているため自分の生活を充実させられない
ワーク・ライフ・バランス(ポジティブ) 仕事でエネルギーをもらうことで、自分の生活がさらに充実している

・120項目版における追加設問

尺度 設問
経営層との信頼関係 経営層は従業員の仕事ぶりを信頼している
経営層は従業員からの提案を真剣に取り扱ってくれる
変化への対応 職場や仕事でどんな変化があるか、上司にたずねる機会がある
職場や仕事の変化がある場合、事前に説明がある
個人の尊重性 一人ひとりの長所や得意分野を考えて仕事が与えられている
自分に合った仕事や職場を社内で見つける機会がある
公正な人事評価 仕事の方針と役割について納得できるような説明がある
人事評価の基準が明確にされている
多様な労働者への対応 女性、高齢者あるいは障がい者が働きやすい職場だ
若い人が働きやすい職場だ
キャリア形成 若いうちから将来の進路を考えて人事管理が行われている
グループや個人ごとに、教育・訓練の目標が明確にされている
自分の職場では、誰でも必要なときに必要な教育・訓練が受けられる
自分の職場では、従業員を育てることが大切だと考えられている
ワーク・セルフ・バランス(ネガティブ) 仕事のスケジュールのために自分の生活を充実させられない
ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ) 仕事で学んだことを活かして自分の生活を充実させている

H領域(仕事の状況や成果について)

・80項目版

尺度 設問
職場のハラスメント 職場で自分がいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)
職場の一体感 私たちの職場では、お互いに理解し認め合っている
ワーク・エンゲイジメント 仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる
自分の仕事に誇りを感じる

・120項目版における追加設問

尺度 設問
職場のハラスメント 職場でいじめにあっている人がいる(セクハラ、パワハラを含む)
職場の一体感(ソーシャルキャピタル) 私たちの職場では、ともにはたらこうという姿勢がある
私たちの職場では、仕事に関連した情報の共有ができている

※現行の職業性ストレス簡易調査票(57項目)に、新職業性ストレス簡易調査票の推奨尺度セット標準版(63項目)を追加した42尺度120項目の調査票のサンプルを使用。
※●は「人事権に関すること、およびその説明」。○は「経営層や上司との距離感、関係性」。

後半19問は、G領域(会社や組織について)とH領域(仕事の状況や成果について)に関して、80項目版からさらに詳細を問う内容で構成されています。

新職業性ストレス簡易調査票「120項目」の後半19問から分かること

19問は、大きく2つのテーマに分けられるのではないでしょうか。
それぞれ●○のマークを記しました。

●の内容

●は人事権に関すること、およびその説明に関する内容です。
組織のなかで自分の力を最大限発揮するためには、当然ですが役割を正しく認識している必要があります。
仕事の方針や役割、目標などが不明確な状態では、何をどのように頑張れば良いかわかりません。
ワーク・エンゲイジメントを高めるためにも「企業理念」を従業員全員が正しく理解していることが必須と言われています。
部署のなかではさらに具体的な仕事の方針や役割、目標について、従業員に正しく伝え続け定期的に確認し合うことが重要です。

また、「公正な人事評価」は、働く人にとって一番重要と言っても過言ではない要素なのではないでしょうか。
自分が何をどのように成し遂げればどのくらい評価されるのかを理解していることがより良い職場環境づくりにおいて重要です。
このように●の設問からは、仕事をするうえで大前提となる説明がなされているのか、または尋ねられる環境があるかどうかが問われています。

○の内容

○は、経営層や上司との距離感や関係性に関する内容です。
従業員を信頼し、意見を真剣に取り扱うなど、いろいろな従業員が居るなかで上層部からすると簡単ではないかもしれません。
ただ、終身雇用の時代ではなくなり、優秀な人材確保が喫緊の課題となってきた現代では、従業員を個人として尊重し、真摯な対応を行うことは組織の発展のためにも必要な心がけでしょう。
このように、○の設問からは、経営層や上司との距離感や関係性から職場の風土がどのような状態かが問われています。

従業員への説明と情報共有が肝

上記19問の内容を参考に、職場環境改善にはどのような事柄がキーとなるか解説しました。
なかでも、従業員への丁寧な説明やこまめな情報共有は、より良い職場環境の必須項目であることがわかります。
経営層や上司が思う以上に、従業員は仕事上の情報を知りたがっているとも言えます。
この機会に、情報共有の内容や頻度、伝え方のツールなどを振り返ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

みなさんも一度は耳にしたことがあるでしょう。

『心が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる』

これは、ウィリアム・ジェイムズ(心理学者、哲学者)の言葉です。
私たちコンサルタントは、研修などで何か知識やメッセージを伝える際、「心がけ」が大事という話をよくします。
また、特に新しいことや難しいことにチャレンジする場合、「できたかどうか」ではなく「やったかどうか」が重要であるという話もします。
ゴール設定を「達成・完了(=できた)」ではなく、「意識・心がけ(=やった)」に設定すると、行動のハードルが下がりますよね。

職場環境改善も同様で、「できたかどうか」でなく、まず「やったかどうか」が重要なのではないでしょうか。
120項目版のストレスチェックから、望ましい職場環境づくりにはどのような事柄が重要となるかを参考にしてください。

<参考>
事業場におけるメンタルヘルスサポートページ「新職業性ストレス簡易調査票の公表について」

執筆者

【保健師】高橋 さなえ
【保有資格】保健師/看護師/公認心理師/第一種衛生管理者/人間ドック健診情報管理指導士/産業カウンセラー/上級心理カウンセラー
【コメント】ドクタートラスト創業初期メンバーの一人。保健師や公認心理師の目線を活かしてコンサルタント・研修講師として活動中。ストレスチェックは、個人だけのためのものでなく組織の成長や生産性向上に欠かせない重要なツールです。みなさまが思う目指す職場像に近づけるよう、役立つ情報をわかりやすく発信していきます。

関連記事